くらし

宇宙人の価値基準。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

男性、女性ともに、容姿端麗な人は存在する。そしてそういう人しか恋愛対象にならない、という人も存在している。多くの人は「人生において、1日だけでもいいから、美しい容姿を手に入れて生活してみたい」と思うだろう。技術が発達したら、本当にそんな変身体験を与えてくれるかもしれない未来を想像すると、私のイメージの中には宇宙人が登場する。

以前、本か何かで「人間が美しい顔と判断するのは、目が大きいとか鼻筋が通ってるということよりも、左右対称かどうかということと、肌のキメの細かさ」だと書いてあった。確かに、その条件は私が美しいと思う人にも当てはまる。それは、美しい紙の上での幾何学的な美しい配分のようなもので、コレを誰もが手に入れられる未来は、きっとそんなに遠くないと感じる。ただ、そんな風な美しさを安価で簡単に手に入れられるとしたら、容姿端麗さの価値は下がっていく。いつしか、美しさの差はほとんどなくなり、きっとそんなものに価値を感じることが古臭い考え方だと思うようになるかもしれない。もしくは、内臓が機能し息をしている状態に普段は価値を感じないのと同じように、当たり前すぎて意識しないものになるかもしれない。だから、昔から目撃証言がある宇宙人はみんな一様に大きな頭で極端に細い体形、真っ黒で大きい目という見分けがつかないような容姿なのではないか。彼らは私たちよりもずっと高度に発展した世界に住んでるという話だし、彼らを未来から来た私たちの子孫だという可能性も、美醜の価値判断が超越したところにあるのなら理解できる。さらに、目で見えてることの価値が極端に下がった時、それは同時に、なにかもっと重要な感覚が人類に備わるということかもしれない。

自分が死ぬまでにそんな感覚が身体に備わるとは思えないが、美しい容姿を手に入れて注目を得るよりも、宇宙人が当たり前のように持ってるかもしれない、現代人が予想もしないような感覚を、いち早く体験したい。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は、https://www.facebook.com/imostudio.imo/にて。

『クロワッサン』1011号より

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