結婚をテーマにした映画は数あれど、ここまで辛辣なものも他にないのでは? デザイナーとして自立し、人生を謳歌しているバツイチ冴子は「結婚なんて無給の女中じゃない」と達観。一方、静は「田舎で父の面倒をみながら栗山の掃除をするよりマシ」と案外したたかです。意地悪に歯止めがかからない未婚姉妹のグレっぷりは、結婚したいのにできないと女はここまで荒れるのだということをこれ以上なく活写。足かせでしかなかった結婚、生存戦略としての結婚、女としてのプライドを満たすタスクとしての結婚。三者三様の立場から、結婚というものが女にとって何なのかを浮かび上がらせます。
キャストはみなはまり役ですが、とりわけ当時50歳の北林谷栄による「婆や」芝居は名人芸の域を極めて独壇場。谷栄だけでも観る価値アリです。バシッと的を射た切れ味鋭いセリフの応酬に、スカッと胸のすく思いを味わえる本作。女性脚本家の草分けである水木洋子のオリジナルで、本人も自作BEST5に数えているだけあって、脂が乗った“女”にしか書けない、忖度なしの女の本音がこれでもかとてんこ盛りになっています。女による女のコメディとして、もっと評価されていい快作!