くらし

名脚本家、水木洋子! 絶頂期の傑作“小姑”映画。│ 山内マリコ「銀幕女優レトロスペクティブ」

『婚期』1961年公開。大映作品。DVDあり(販売元・KADOKAWA)

女のあけすけな本音トーク劇は、大映映画の専売特許。なかでも1961年(昭和36年)のお正月映画として公開された『婚期』は、小姑の嫁いびりという陰湿なテーマを、度を越したどぎつさで描いた人間喜劇です。

唐沢家の次女波子(若尾文子)と三女の鳩子(野添ひとみ)はイライラしていた。婚期を逃しつつある焦りに加えて、兄(船越英二)が静(京マチ子)を嫁にもらってからというもの、実家の居心地が悪くなったのがその理由。二人はあの手この手で兄嫁をいびりまくっていた。結婚に失敗している長女冴子(高峰三枝子)は中立の立場で妹たちを大目に見ていたが、ガスの不始末から殺人未遂騒動まで起こり、怯えた婆や(北林谷栄)は暇を出してほしいと申し出て……。

結婚をテーマにした映画は数あれど、ここまで辛辣なものも他にないのでは? デザイナーとして自立し、人生を謳歌しているバツイチ冴子は「結婚なんて無給の女中じゃない」と達観。一方、静は「田舎で父の面倒をみながら栗山の掃除をするよりマシ」と案外したたかです。意地悪に歯止めがかからない未婚姉妹のグレっぷりは、結婚したいのにできないと女はここまで荒れるのだということをこれ以上なく活写。足かせでしかなかった結婚、生存戦略としての結婚、女としてのプライドを満たすタスクとしての結婚。三者三様の立場から、結婚というものが女にとって何なのかを浮かび上がらせます。

キャストはみなはまり役ですが、とりわけ当時50歳の北林谷栄による「婆や」芝居は名人芸の域を極めて独壇場。谷栄だけでも観る価値アリです。バシッと的を射た切れ味鋭いセリフの応酬に、スカッと胸のすく思いを味わえる本作。女性脚本家の草分けである水木洋子のオリジナルで、本人も自作BEST5に数えているだけあって、脂が乗った“女”にしか書けない、忖度なしの女の本音がこれでもかとてんこ盛りになっています。女による女のコメディとして、もっと評価されていい快作!

山内マリコ(やまうち・まりこ)●作家。責任編集長をつとめた雑誌『エトセトラVOL.2 We LOVE 田嶋陽子!』が発売中。

『クロワッサン』1011号より

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