くらし

鮮やかな色彩の世界で展開する“違法の恋”。『ラフィキ:ふたりの夢』

  • 文・永 千絵
古いしきたりに縛られずに生きたいとケナ(右)とジキ(左)は愛を深めていく。

ケニア映画として初めてカンヌ国際映画祭に出品された『ラフィキ:ふたりの夢』は、製作されたケニア本国では上映禁止になっている作品だ。ケニアでは犯罪とされている同性愛を描いたものだから。

といっても堅苦しく構える必要はない。なにしろ、映画が始まって最初に目に飛びこんでくるのは、明るく鮮やかな色彩の爆発。ファッション、インテリア、町の屋台にいたるまで、なんともカラフルで心躍る光景が、わたしたちを一気に映画の世界へといざなってくれる。

主人公はふたりの少女、ボーイッシュなケナと、奇抜なヘアスタイルにミニスカート、ピンクの似合うジキ。それぞれの親が議会選挙の対立候補同士でもあり、最初から、周囲に反対される構図も見えてくる。

ケナもジキも、ふたりがふたりともなんともいえず美しく魅力的。対立候補の娘同士は、ちょっとしたこぜりあいをきっかけに、あっという間に仲良くなる。一緒に出かけ、話をしているうちに、友情とはまた違った感情をお互いに持つまでにも時間はかからない。

親や大人の都合にふりまわされる現状に「みんなみたいにはならない」と約束する若いふたり。

「じゃあ、なにになる?」と問いかけるジキに、「本物=REALになろう」と答えるケナ。

誰かを好きになると同時に、それが想いを共有できる相手だったら。そんな相手にめぐり会える幸せはなにものにも代えがたい。相手が異性でも同性でも同じことだ。この人と同じ景色を見ていたい。この人が感じることを同じように感じたい。そんな想いは周囲が潰そうとして潰れるものではない。

残念なことに、愛し合う相手と共にいたいというケナとジキの願いを異常と断ずる社会は、彼らが抱く想いを犯罪として制裁を科す。

映画に描かれる生活のなかにいろいろな“色”が自然に、美しく共存するように、なぜいろいろな人の違った想いをお互いに受け入れあうことができないのか、暗澹たる気持ちになるとともに、もちろんかすかな希望を描くことも忘れない映画、是非。

ケナに心を寄せるブラックスタは、家にいてくれたら、土地も財産も渡すとケニアでは普通の妻像とともに求婚をする。
ケナとジキはナイロビの街を眺めながら将来の夢を語りあう。
ジキとの恋愛をとがめられたケナは家族に連れて行かれた教会で牧師を前に、懺悔と改心を求められる。
ケナに心を寄せるブラックスタは、家にいてくれたら、土地も財産も渡すとケニアでは普通の妻像とともに求婚をする。
ケナとジキはナイロビの街を眺めながら将来の夢を語りあう。
ジキとの恋愛をとがめられたケナは家族に連れて行かれた教会で牧師を前に、懺悔と改心を求められる。

永 千絵

(えい・ちえ)●1959年、東京生まれ。映画エッセイスト。現在、カード情報誌の連載をはじめ、各誌で映画評を執筆する。

『ラフィキ:ふたりの夢』
監督:ワヌリ・カヒウ 出演:サマンサ・ムガシア、シェイラ・ムニヴァ、ジミ・ガツ、ニニ・ワシェラほか 11月9日より、東京・シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。https://senlis.co.jp/rafiki/

(C)Big World Cinema

『クロワッサン』1008号より

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