1990年代の“渋谷系”を象徴したユニット、ピチカート・ファイヴのベストセレクションがリリースされる。ピチカートは小西康陽(やすはる)さんが牽引。ヴォーカルを佐々木麻美子さん、田島貴男さん、野宮真貴さんが務めたが、今回は全盛期ともいえる野宮真貴さん時代から選曲。小西さんが完全監修を行った。「スウィート・ソウル・レヴュー」「東京は夜の七時」など36曲を収録している。
「ピチカートにいた時代は、私のキャリアでもいちばん世界中を飛び回った10年かもしれません。あのころ、世界一かっこいい音楽を作っているのが、ピチカートだと思っていました」
野宮さんが’90年代を振り返る。
「小西さんと私の関係は監督と女優のようなもの。彼の理想とする音楽をヴォーカルやビジュアルで表現するのが私の役割だったと思います」
なかでも記憶に鮮明なのは「スウィート・ソウル・レヴュー」のレコーディングだという。
「CMソングでもあり、小西さんからパンチを利かせてほしいと言われたことは忘れません、歌唱の頭に小さく“ん”を入れるイメージで歌うようにアドバイスしてくれました」
ヴォーカリストとして新しいアプローチが生まれ、曲もヒット。今でも音楽的なパワーを感じる。
〈今回、スタジオであらためて聴き直したとき、野宮真貴さんのヴォーカルの素晴らしさに気づいて感動しました〉
これはアルバムの中で「スウィート・ソウル・レヴュー」について小西さんが書いている楽曲解説だ。
「クロワッサン世代の人は、青春時代にピチカートを聴いた人も多いはず。今、若い人も含めて再び渋谷系ブームがきているようですが、これは、ピチカート・ファイヴの曲が世代を超えてスタンダードナンバーとして聴き継がれているからだと思います。自分でもう一度楽しむのもいいし、お子さんと一緒に聴いてもいいですね」