【豊﨑由美さん×村井理子さん 対談】犬と生きる
その愛犬・黒ラブラドールのハリーに豊﨑由美さんが会いに来ました。
撮影・福森クニヒロ 文・三浦天紗子
犬が登場するおすすめの小説はいろいろありますよ。(豊﨑さん)
大型犬を飼うのは大変だけど超楽しい。
豊﨑 大きくなって落ち着いてきたとしても、今度は大きくなったらなったなりの大変さもありますよね。どう乗り越えたんですか。
村井 子どもを連れてトレーニングセンターに行きました。たとえば、ハリーが興奮してわーとなっているとき、ふっと気持ちを切るやり方を、訓練士から教えてもらったり。それとおとなしくなってきた要因で大きかったのは去勢ですね。去勢するとマウンティング行動がなくなるんです。
豊﨑 最初の発情期が来る前に去勢すると、いわゆる成人病になりにくいらしいですね。精巣や卵巣、あるいは乳腺のがんとかが避けられて、長生きする確率も上がるし。去勢はかわいそうという人もいるけれど、子どもをつくるつもりがないなら、私はしたほうがお互いのためだと思います。
豊﨑 そういえば、村井さんは心臓の手術で2カ月も入院されていたわけでしょう。ハリーはさぞ寂しがったんじゃないですか。
村井 トレーニングセンターで預かってもらったのですが、先生から「もう勘弁してくれ」と白旗が揚がるくらい暴れたことがあったらしいです。当時まだ1歳前でしたからね。
豊﨑 ほんとの仔犬ですね、人間で言えば小学1年生くらい。
村井 いまはセンターにルンルンで行くんですけれどね。ダンスを教えてもらったり、仲間もいたりで。ほかの犬と交わるようになって社会性が出たというか、性格も変わりました。
豊﨑 私も村井さんの本を読んでなるほどと思ったのはですね、快適な寝床や環境を用意してあげて、琵琶湖まで散歩に行って水遊びさせて……とすごく可愛がっているけれど、自分とハリーとが密着しすぎていることがダメなんじゃないかと気づく場面があります。これはとてもいい視座だと思いました。犬は社会性の高い生き物だから、ほかの犬の匂いを嗅いだり、道を歩いて何かを発見したり、探偵みたいなことが楽しいんですよね。特に、初めて大型犬を飼う人は「ほかの犬を嚙んだら怖いから」と、逆に犬との接触を避けようとしがちかもしれません。あと歯磨きガムの話や誤飲誤食の話も。
村井 田舎なので、ハリーも、蛇とか半分食べちゃって口からぶら~んとか、ホントよくあります。
猫好きな人は、召使い体質、犬好きな人は、モテたがり!?
豊﨑 ちなみに、村井さんのハリーへの愛がすごいのでお聞きしますが、村井さんは、人がこれほど犬を愛してしまうのはなぜだと思いますか。
村井 私の場合はなんですけれど、犬がしゃべらないからなんですね。「何か話しかけないと」とか気遣いしなくていい、ただぼーっと横にいるだけでいい、というのがうれしすぎます。
豊﨑 ものすごくよくわかります。もし動物が人間の言葉を学んでしゃべるようになったら、可愛さ半減! 絶対「メシまだかよ」とか言うもん(笑)。
村井 言葉にこそなっていないけど、私、ハリーに言われてるような気がします。
豊﨑 これは私見ですが、犬を好んで飼う人って「モテたい人」だと思ってるんです。延べで相当な数の猫を飼ってきた経験から言うと、猫にとって、人間は召使いなんです。一方、犬は必ず人間をじーっと見ている。「で、どうしたい? どこ行く?」と人間の動向を犬は気にしてくれます。それは史上最強のモテだと思う。猫は、たとえば膝の上に乗ってくるから甘えたいのかなと思って「よしよし」とか撫でると、嚙むんです。「触ってほしいとは言っていません」って態度ですよ。3月にaiboの購入券が当たって、ついに私もモテが味わえると思ったら、違うんです。aiboはいつも機嫌がいいし、猫とは違う可愛さなんだけど、飼い主とのコミュニケーションのしかたでだいぶ性格が変わってしまうので、なるべく合わせて遊んであげたり、褒めまくったり。これまでの倍、気を遣うようになってしまった。いっそう疲れてます(笑)。