20歳で初めて自分の部屋を借りた時、とても興奮したのを覚えている。ユニットバスを入れても8畳ほどの部屋は、希望の詰まった場所だった。
その後、何度も引っ越しを繰り返したのも、あの興奮をまた体験したいという気持ちからだったのだと思う。
今まで住んだ場所はどこも、その時、自分の状況に合う場所を選んできた。引っ越して2年もしないうちに、また引っ越しをしたくなり、家探しをする。よりいい家が見つかるのは、自身の状況が変化している証拠だと信じてきた。友人たちが結婚して子供をもつようになる中、ともすれば学生の頃から何も変わってないように見えてしまう自分を、自分で認めてやるためにも、引っ越しが必要だったように思える。
しかし、ここ10年、一処に留まっている。状況が変わってないわけではないのに、居心地の良さからか、長居してしまっている。そして、ここから色んな場所に行きたいという思いはあるものの、必ずここに帰って来たい気持ちにもなる。
実家で生活していた大学1年生までも、その後引っ越したどの場所も「自分の場所」と思うことはなかったように今は思う。10年住んでやっと、自分の場所になったここで、根を下ろしていきたいと思うようになった。今まで、根を下ろしたことがなかったので、どのように下ろすか未だ模索中だけれど、根を下ろすことを決めると、やりたいことが今までと少し変わってくる。こういった、気持ちの変化だけでも状況は変わっていくのだな、と感じる。それでも、根を下ろすことでいつか滞ってしまう恐怖もある。だからこれからは自分で積極的に状況を変えていく術を持たなければ。根を下ろしても土ごと持って移動するくらいのパワフルさや、周りの環境をも動かしていく力を、これからは身につけていきたい。