くらし

ズレている私。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

最近、言ってはいけないことが増えている。私も出来る限りは気をつけるようにしているが、そういうことをいちいちチェックする人の前では、なかなかスムーズに話せない。

そういう私も、父に対して「それ、外では言わないでね」とよく言う。父はテレビを見ながら悪態をついたり、セクハラめいた発言をしたり。私に釘を刺されて、父は「そんなん気にしてたら喋られへんわ!」と怒り出す。

それ、私も言いたい。大学の講義に呼ばれて行ったとき、事前に「私は自分が話しているとき、目の前で寝られるのが嫌なので、寝る人は出て行ってください」とアナウンスをし、その後、眠りにつく生徒を強制的に退席させた。授業後の先生との懇親会の時「束芋さんが言ったアレ、今じゃパワハラって言われるんですよ」と言われた。その数年前まで常勤で大学の教壇に立っていた私は、先生という立場を辞めて本当に良かったとつくづく思った。

偉そうな肩書きなんか持つものではない。現在、そういった肩書きはとても損な立場に立たされる。授業とは言え、人と人との対話がなされる場で、対話をする気がない人は、そこにいない方がお互いに良いと思う。そういう気持ちは今も変わらない。そして、私は先生には向いてないということでもあると思う。

話す、というだけでなく、話すことを含めた表現全体が、様々な見えない規制がかけられつつある。先生にならないという選択肢はあるが、表現者を辞めるという選択肢は、私には多分ない。時代の規範が自分の規範とズレていることを感じる。

この恐ろしい規範は嵐のように過ぎ去ってくれる日がくるのか。そうでなければ、ズレのある私のような人間は皆、何らかの策が必要だと思う。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は、https://www.facebook.com/imostudio.imo/にて。

『クロワッサン』1004号より

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