お金は貯めるものではなく、“上手に使う”ためにあります。
撮影・三東サイ 文・大澤はつ江
「清潔な水回りは幸せのシンボル。」
「ドイツでは、どんなに高級でハイセンスな洋服に身を包んでいても、その人の家の水回りが汚れていると、がっかりどころか、人格まで疑われてしまいます。清潔な水回りは“健康な品位を表す”といわれているんです」
確かに水回りが汚れていると、気分が落ち込んでしまうことも。
「水回りは水垢やカビが発生しやすい箇所。放置しておけば錆が出て蛇口に不具合が生じたり、タイルの目地などが黒ずみ、不潔な印象になったりします。また、蓄積した汚れにより、排水口などから悪臭がする場合も。水回りの修繕には費用がかかりますから、そうならないためにも日々の手入れが重要です」
キッチンや洗面所、風呂場など、使用後は床や壁、蛇口などに水滴を残さないように、布でサッと拭くことが肝心だ。
「キッチンペーパーで拭くのは駄目。無駄な出費です。布で磨くように拭く、を心がけてください。昔から磨きあげられた清潔な水回りには、福の神が舞い込む、といわれますから、住む人に健康と幸運をもたらしてくれますよ」
使ったら水気を拭き取る、を習慣化してしまえば、手が自然に動き、常に清潔に保たれる。
「こうしておけば不意の来客にも慌てずに済みます。この積み重ねが大きな出費を抑えるんです」
「買い物の賢人になる。」
買い物はストレス解消にもなり、楽しいひとときだが、だからといって欲しいままに購入していては家計は破綻してしまう。
「買い物上手になることは、お金とうまく付き合う第一歩です。自分にとって本当に必要なものか否かを見極める目を持つことが大切なんです」
とはいえ、我慢ばかりでは心に潤いがなくなるような。
「私も衝動買いをすることはありますが、でも、それはちょっとしたお楽しみで、金額も1000円以下。高額なものを買うときは最低1日は考えます。今、どうしても必要? 買わないと後悔する?と自問して、やっぱり必要、となれば迷いません。実は、このストールもそのひとつなんです」
美しい色彩の薄手のカシミアのストールだ。
「30年前にパリのシャネルで購入しました。当時の私にとっては、大枚はたいた高価な買い物でしたが、後悔はしていません。軽くて温かくて肌触りも抜群で、まさに理想のストール。今もこうして大活躍してくれています。賢い買い物はお金を生かすんです」
「出費せずに創意工夫で豊かな暮らし。」
壊れたから、古くなったから買い替えるのではなく、家にあるものを見渡して、使い方を自分なりに工夫してみると、意外に使い勝手のいいものが生まれることがある。
「例えばこの花瓶(写真4)なんですが、ガラス部分が割れてしまって、スタンド部分だけが残ったんです。使い道もないので処分しようと思っていたら、チェコで買ったクリスタルの花瓶が目に留まり、何げなくスタンドにはめてみるとピッタリ。新たに素敵な花瓶が出来上がりました」
ほかにもクッション(写真1)は、配色が気に入っていたスカートがくたびれてきたので、使える部分をカットし、カバーに作り直した。
「スカートを違う用途で生かすことが出来ました。工夫することは新しいものを作り出す意欲にもなり、脳の老化も防ぎます。世の中、便利になって、こんなものが欲しいと思えば、ネットなどで簡単に探すことはできますが、お金がかかります。その点、あるものを活用すれば出費もなし」
埋もれていたものを探し出し、生かす工夫をする時間も楽しい。
「物と物との組み合わせの妙が生まれるとうれしくなります。愛着のあるものを生かす工夫こそ大切だと思います」
「健康ならお金も貯まる。」
健康は何ものにも代えがたい。病気になれば医療費もかさみ、何より人生を楽しめない。
「歳を重ねれば、自身を含め健康が気になります。病気になったらどうしよう、動けなくなったら、と不安になる。でも、心配ばかりしていると、心が病気になってしまう。健康のために、日々どうするか?を考えてほしい」
背筋をピンと伸ばして速足で歩く、エスカレーターではなく階段を使うなどを実行している沖さん。
「仕事に行き詰まったり、悩みがあるときやクヨクヨしたときには散歩に行きます。頭が切り替わってアイデアが湧くことも多いですね。外のフレッシュな空気を吸うだけですっきりします」
健康でなければ食事もおいしくない、とも。
「タンパク質は大事です。若いときのように量は食べられませんが、良質の肉や魚を摂るようにしています。食べることは健康の源ですからおろそかにはしません」
『クロワッサン』1002号より
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