からだ

【日本歯科大学教授の菊谷武さんに聞く】食べ物が飲み込みづらくて…、 舌も老化するのですか?

西洋医学の専門家に舌の健康維持や老化防止のポイントを教わりました。
  • 撮影・黒川ひろみ 文・斎藤理子

よく食べて喋ることが、舌の老化を防止する第一歩です。

菊谷 武さん 日本歯科大学教授、 口腔リハビリテーション多摩クリニック院長

普段あまり意識しないでいる舌の動きだが、脚や腰などの筋肉と同様、舌の筋肉も加齢に伴い弱くなっていくと菊谷武さんは指摘する。

「舌の基本的な働きは、“喋る、噛む、飲む”です。衰えが進むと、まずなめらかに喋ることができなくなり、噛めなくなり飲めなくなる。この動作は命を支えるとともに、社会性との関わりが非常に大きいのですが、それを認識している人は少ないですね。実は、舌が衰えるということは社会性が失われていくということにもつながっていて、社会的フレイルの問題といえます」

フレイルというのは、運動機能や認知機能が低下し、生活機能が落ちた状態のこと。人と会ったり会食したりという社会的な生活を避けるようになり、悪化するとフレイルを経て要介護状態に進む。そうならないためには、できるだけ早く気づき、正しく予防や治療をすることが重要になる。

舌の衰えに気がついたら専門医へ。

舌の機能は50代から徐々に落ち始めます。舌の筋肉は口の中にあって使わない日はないので、衰えをなかなか感じられないもの。それでも滑舌が悪くなったとか、食べるのが遅くなったということを人から指摘されたら、老化のサインだと思って対策を始めたほうがいいですね」

食べ物を噛み、飲み込むためには、舌の巧みな動きが必須になる。加えて、「筋力」「持久力」「可動域」も必要で、どれが欠けても舌の機能は落ちる。その舌の衰え度を自分でチェックするのは簡単で、日常生活で意識できることがたくさんある、と菊谷さん。

「話を聞き返されることが増えた、飲み物にむせる頻度が高くなった、食べやすいものや柔らかいものばかりを無意識に選んでいる、よく食べこぼす、歯は悪くないのに噛みにくくなった、細かくパラパラしたものが食べにくくなった、といったことが多くなってきたら、舌が衰えてきている兆候です。気がついたら、とりあえず早めに歯科に相談してみましょう」

舌の筋肉は、若いうちに鍛えておけばそれを維持することができるものではない、と菊谷さんは言う。ただし、身体の筋力が高ければ、舌力がいったん衰えても訓練した際の反応がよく、脚力、握力と舌の機能は比例するとのデータがあるのだそうだ。

最近こんなことが 増えていませんか?

□ 聞き返されることが多くなった。
□ お茶を飲んでいるとむせてしまう。
□ 食べやすいものをつい選んでいる。
□ 歯が悪くないのに噛みにくくなった。
□ おしゃべりがしにくくなった。

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