【中医師の幸井俊高さんに聞く】食べ物が飲み込みづらくて…、 舌も老化するのですか?
撮影・黒川ひろみ 文・斎藤理子 イラストレーション・川野郁代
体調不良や老化によって変化する舌。
加齢により水分循環の機能が衰えてくると、乾いた舌苔が現れる。さらに、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの持病があると、舌が割れ、溝ができることがある。全体に紫色の舌の場合や、裏側の血管が怒張している場合は血管の老化や動脈硬化に注意。
舌の老化防止は、全身の健康から。
大人の場合、健康な人でも完璧に理想的な舌の人はあまりいないので、これにとらわれすぎることはないと幸井さん。季節や気候、その日の食事、たとえば生理前後などの体調、加齢によっても舌の状態は変化するという。
「毎朝、食前に舌を見るといいですね。舌の色や大きさや形、舌苔の量や色、舌の裏の状態をチェックします。同じ場所、同じ光の下で見れば変化に気づきやすいです」
健康な時の舌の状態を知り、日々観察することで、変化に気がつくことができると幸井さんはアドバイスする。
「老化が進むと舌も変化していきます。身体の機能が落ちてくると白くて水っぽい舌苔が厚くつくことが多いですね。それが進むと乾燥してひび割れができたり、全体的に紫色っぽくなったりします。その表れ方は人によっていろいろですが、暴飲暴食してきた人は舌に出やすい。でも、舌だけが老化するのではなく、ありとあらゆる全身の状態が舌に表れるわけですから、生活習慣や食生活を見直して全身状況を改善し、漢方薬を併用したりすることが重要です。そうすれば、舌の状態も年齢相応まで戻すことはできます」
自分の体質に応じた対策を。
舌の状態は病名を表すのではなく、その人の“証(しょう)”を表していると幸井さんは解説する。“証”というのは個々の体質であり、同時に症状や病状も包括している、体内の状態を表したもの。ひとりがいくつかを合わせ持つこともある。たとえば、舌苔を取ってもすぐにまたつくといった症状があるようなら、中医師に相談し、自分の体質や体内の状態を知り、それに応じて全身状況を変える必要があるのだという。
「東洋医学では、すべてをバランスでみます。身体の中の陰と陽、肝心脾肺腎の五行などがありますが、それが崩れると、舌の状態も悪化します。自分のもともと持っている体質を知ることで、何をすべきかがわかるのです」
必要なものが不足している人はそれを補い、余分なものが溜まっている人は捨てる。身体の中の流れが悪い人は流れを良くし、全体がアンバランスな人は調える。自分の体質に合わせて生活や食事を改善をすることで、舌の健康も長く保たれることに。
幸井俊高(こうい・としたか)●中医師、薬剤師、「薬石花房 幸福薬局」代表。薬学部、北京中医薬大学卒業。中国政府認定中医師。著書に『舌をみれば病気がわかる』(河出書房新社)など。
『クロワッサン』978号より
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