足首にある距骨を整えて、ぐっすり眠るための3つのセルフマッサージ法。
撮影・中島慶子 イラストレーション・川野郁代 文・石飛カノ
距骨とは足首の奥深くにある骨のこと。読み方は“キョコツ”。爪先からかかとまでの「足」と膝下の「脚」のつなぎ目にあたる骨です。
日本で初めて、この距骨に着目したのが柔道整復師の志水剛志さん。距骨の歪みが外反母趾をはじめとするさまざまな不調を引き起こす原因と捉え、手技で歪みを調節することでトラブルが改善していくことを実証。眠りの質の改善もそのひとつだという。
「距骨調整を受けてもらった日の夜、遅くまで起きていられなかった、朝までぐっすり眠ってしまった、という方が少なくありません」
はて、足元の骨の調整なのに、なぜ快眠につながるのか?
「距骨を調整すると、口が開きやすくなったり、肩こりや頭痛が解消することもあります。それは距骨が骨盤と影響し合っているからです」
二足歩行をしている限り、距骨の歪みは必ず起こる、と志水さん。理由は足の骨の中で唯一、筋肉がくっついていない骨だから。筋肉の支持がないため、朝起きて立った瞬間から少なからず歪みが生じる。
「距骨が前方にズレる場合もあれば、逆に後方にズレる場合もあります。私は前者をフロントタイプ、後者をバックタイプと呼んでいます。どんな人でもフロントとバック、どちらかのタイプに分けられます」
距骨が前方にズレると、身体の後ろ側の緊張が強くなり、骨盤が後ろに引っ張られて後傾する。逆に距骨が後方にズレると、身体の前面の緊張が強くなり、骨盤が前に引っ張られて前傾する。距骨と骨盤が互いに影響し合っているというのは、こういうわけ。
距骨→骨盤→背骨のラインを毎日整えて、快眠を得る。
「距骨の歪みが骨盤の傾きにつながり、骨盤の上にのっている背骨が緊張します。背骨に沿って走っているのは内臓の働きや呼吸、体温といったすべてのリズムを整えている自律神経です。その機能が緊張によって妨げられてしまうと身体のリズムが乱れます。もちろん、睡眠リズムも同様です」
自律神経は日中に優位になる交感神経、夜間に優位になる副交感神経がメリハリよく切り換わることで身体のリズムを刻んでいる。日中、交感神経が活性化すればアクティブに動けるし、夜間に副交感神経が活性化すればぐっすり眠れる。
「整体の世界では、病気であるなしにかかわらず、身体が動けるか動けないかを重視します。血液やリンパ、関節の滑液など、さまざまな体液は身体の動きによって流れます。歪みや緊張で動けなくなると身体は硬くなり、体液の循環も滞ってしまうのです」
日中、交感神経の働きで思う存分身体を動かせば、夜は自動的に副交感神経にスイッチが入り、質のいい睡眠が得られる。幼い子どもが昼間元気いっぱいに動きまわり、夜になると電池が切れたかのようにバタッと眠るみたいに。そのためにも距骨の歪みを毎日取ることが重要、という理屈。
「これまでの整体では、“背骨の緊張を解き放つために骨盤を矯正しましょう”ということをしていました。でも、立って歩くたびに元のクセに戻ってしまいます。だからこそ、さらに根っこにあたる距骨を毎日調整する必要があるのです」