誤解も多いがん治療。がんと診断された時のためのQ&A。
撮影・岩本慶三 文・及川夕子
Q.抗がん剤が効いた、効かないとはどういうこと? 逆に副作用が出ないと、効いていない気がします……。
A.化学療法は標準治療の一つであり、抗がん剤には、がんを治す、再発を予防する、より良い共存を目指すという3つの目的があることを、まずは知ってほしいと思います。
抗がん剤の効きやすさについてですが、これはがんの種類やステージ、患者さんの全身状態によっても変わります。がんは100人いたら100通り。さらに、抗がん剤は130種類もあり、一括りにはできません。抗がん剤がすべての人に効かないということはありませんし、効果が出なければ、別の抗がん剤を使うという法もあります。
また、副作用が出ないことと抗がん剤の効果は関係ないので、気に病むことはありません。副作用とは正常細胞に対する作用なので、がんに効いたかどうかはあまり関係がないのです。
近年、抗がん剤の副作用は、うまく抑えることが可能になっています。ただ、それには専門的な知識が必要。そもそも抗がん剤を行う必要があるのかも、きちんと判断できる専門医にかかるほうが安心です。
治療方針に不安を感じたら、抗がん剤の専門家である腫瘍内科医がいるがん拠点病院で、セカンドオピニオンを受けるという方法もあります。覚えておくと良いですね。
Q.妊娠・出産の年齢的なリミットが近づいているのに、乳がんと診断されました。妊娠か治療かで迷っています。
A.がんの治療が妊娠に影響を与えないのか、患者さんは不安になりますよね。でも、現在は、がんになったら妊娠か治療かどちらかしか選べない、妊娠・出産を諦めざるを得ないという時代ではなくなってきています。がんの種類によっては、妊娠前や妊娠中に抗がん剤治療を行うことができる場合もあります。例えば、妊娠中に乳がんと診断された場合、妊娠中期以降に抗がん剤を行うと、安全に治療できることもあるのです。
確かに、中には、患者さんの命や疾患の治療を最優先に考えると、妊娠を諦めなくてはならないケースもあります。がんによっては放射線治療や化学療法(抗がん剤)、手術を受けることで、生殖機能を失ったり無月経や早期卵巣不全(早期閉経)を起こしたりする可能性があるからです。特に若年性のがんの場合、患者さんの将来に大きく関わる問題です。そのため最近は、受精卵や卵巣組織の凍結保存、放射線放射方法の工夫、男性では精子の凍結保存など、生殖機能を温存する治療法の選択肢が増えています(保険適用外の治療もあり)。
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