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【後編】2人に1人が罹患する時代。がんとともに生きる知恵。

腫瘍内科医の勝俣範之さんと、がんサバイバーで美容ジャーナリストの山崎多賀子さんの対談後編。今回はがんの予防法、がんとよりよく共存するための課題を話し合います。

影・岩本慶三 文・及川夕子 監修・勝俣範之

「がんとのより良い共存のために。 意識から変えていきましょう」と勝俣さん。
「がんとのより良い共存のために。 意識から変えていきましょう」と勝俣さん。

山崎 最後に、がんと共存する時代になり、どんな課題があるでしょうか。働き方、生き方、人々の意識など、いろいろあると思うんですけど。

勝俣 寿命が延びていけば、がんになる人は今後も増え続けます。職場にがんを隠さなければならなかったり、人生の落伍者のような肩身の狭い思いをする。そうした偏見は変えていかないといけませんね。アメリカでは、がんを告白したら「コングラッチュレーション!」と言って拍手するんですよ。

山崎 これから病気に立ち向かって行く人にエールを送る社会にしているんですね。たくさんのがんサバイバーがいて、それぞれが人生を懸命に生きている。がんはかわいそうじゃないし、困っている人がいたら助けるという感覚でいいと思うんです。日本も、「がんですけど何か?」と、堂々と言える社会にならなくてはおかしいと思います。

勝俣 山崎さん自身は、がんとどう向き合ってきたのですか。

山崎 がんを告知されてすぐには、がんと共存するなんて考えもしません。考えられるのは、治療後ひと息ついてから。再発の可能性はゼロではない。でも、自分の手に負えないことは考えても仕方がないので考えないようにしています。明日のことは分からないし、今できることをやるようにしています。

勝俣 すばらしいことですね。できることを毎日やっていく。それが大事だと思うんですね。

山崎 がんですべてを失うわけではないんですよ。私の場合、新たに手に入れられるものもあって、誰かの役に立つ仕事もさせていただいて、むしろ幸せかもしれない。今も気持ちがドーンと落ちたら「私は幸せだ!」って叫ぶんです。で、にやっと笑ってしまうと、「まあいっか」って思えるんです。

勝俣 がんになったことは負けではなく、最大のピンチなんです。誰でもできることは、今日を精一杯生きること。がんの診断を受けた人は、生涯を全うするまでがんサバイバーです。優しく応援するような社会にしたいですね。

『クロワッサン』956号より

●勝俣範之さん 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授/がん患者が抱える問題に対して共に悩み・闘うがんの総合内科医として、日々の診察や医療情報の発信に尽力。

●山崎貴子さん 美容ジャーナリスト/乳がん経験者である自らの体験や美容の知識を生かし活動中。がん患者のためのメイクセミナーもライフワークに。

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