私がヨガに夢中になる理由vol.2阿部珠実さん「一番変わったのは、
より自由になったこと」
ファッションカメラマンから、ヨガ講師へ。「自分で壁を作らなければ、なんにでもなれる。そう思えて、自由になりました」と語る、阿部珠実さんを訪ねました。

「仕事に集中できないので、病院に行くのですが、医師からはなんでもないと言われてしまう。でも、痛いものは痛い。運動したほうがいいとは思うけれど、運動は好きではないし、ジムにも通ってみたけれど、センスはないし(笑)。ヨガはどうかなあ、私にもやれるのかなと……。
ところが、自分に合うスタイルのヨガには、なかなかめぐり合えなかった。最初はフィットネスクラブでヨガを体験。いろいろなタイプのクラスを受けてみたが、終わった後にいずれも違和感があった。それでも1年ほど続けたが、「私には違う」との結論に。
その後、友人の紹介で、シバナンダヨガの教えを基本とした友永ヨーガ学院の体験レッスンに参加してみたところ、「無理なくできて、終わった後が気持ちいい。また来たいかも!」と、どんぴしゃり。
「軽い気持ちで通い始めたら、8年も続いてしまいました」
ヨガには、いろいろなタイプがある。講師との相性や、クラスの雰囲気との相性もある。試しに受けてみたひとつのレッスンが、仮に自分に合わなくても、阿部さんのように、別の場所に目を向けてみると、無理なく溶け込めるクラスが見つかるかもしれない。
通い始めたら、腰痛が軽くなっていくのを実感できた阿部さん。はじめは週1回だったのが、2回、3回と増えていき、「どんどん体が変わって」きて、気づくと腰の痛みはなくなっていた。熱心に通う阿部さんに、あるときクラスの先輩が、「指導者コースに入ったら?」とすすめてくれた。3年間のコースだったが、調べてみると興味深い内容で、やってみることに。
「課題や宿題は大変でしたが、出会う先生がみんな面白く、同期の仲間にも恵まれました」


晴れてコースを修了したあと、阿部さんはカメラマンの仕事はいったん休止し、ヨガ講師として歩み始める。現在は都内のスタジオでレッスンを受け持つほか、千葉にある自宅の近所の自治会館で週1〜2回、地域の人を対象に、身近なヨガ教室を開いている。
「地元の幅広い年代の方が参加してくれます。伝えたいのは、足の指を動かすなど、あきらめないで習慣的にやっていれば、誰にでも効果のあるヨガです。これならできると言ってもらえると、うれしいですね」
参加者からは、「おかげで転ばなくなった」「以前より足が動くようになり、生活が楽になった」といった喜びの声も聞かれる。また、教室は今まで交流のなかった地域の方々のおしゃべりの場、情報交換の場にもなっている。
「自分にできる範囲でヨガをすると、いつもの生活がちょっと豊かに感じる、今ある体やすべてが大事に思えてくる、そういう日常的なものとして、ヨガを普及させたいと願っています」
自分の体に向き合えるようになるとやるべきことがはっきりしてくる。元気が出てくると、生きる自信になる。それは阿部さん自身が、ヨガを通じて得た変化でもある。
「子どもの頃は肉がまったく食べられず、大人になっても好んで食べることはあまりありませんでしたが、今は体が欲するときがあり、素直にいただきます」。
味が苦手だったコーヒーが、おいしいと感じられるようにもなった。地元の豆の販売店で淹れ方を教わり、毎朝欠かさずドリップしている。
興味の対象が広がる中、二人ヨーガと呼ばれる「楽健法」を深めるべくこの春からセラピストコースを受講。
「思い切って転身したわけではなく、気がついたらこうなっていたという認識です。ヨガを知って一番変わったのは、より自由になったこと。自分でこうじゃなきゃいけないと決めつけていた壁が外れていき、なんにでもなれるんだと思えるようになりました。今後も自分の進化が楽しみです(笑)」

じて瞑想的になれるのが好き。




◎阿部珠実さん ヨガ講師/雑誌等でファッションカメラマンとして活躍する傍ら、ヨガを始め、インストラクターの資格を取得。千葉の自宅で17歳の愛猫・太郎くんと暮らしている。
『クロワッサン』925号(2016年5月25日号)より
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