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江戸切子作家・小川郁子さんの着物の時間──江戸切子で着物姿が引き締まる。帯留めをそんな存在にしたいです

今回の「着物の時間」は、江戸切子作家・小川郁子さん。東京都出身。上智大学文学部心理学科卒業後、江戸切子の第一人者・小林英夫氏の元で9年間、研鑽を積む。独立後は自然の中にある“美”を江戸切子で表現している。

撮影・青木和義 ヘア&メイク・桂木沙都美 着付け・小田桐はるみ 文・大澤はつ江 撮影協力・庭のホテル 東京

グラデーションが美しい紅花紬と水玉の名古屋帯で「雨あがりの虹」です

小川郁子(おがわ・いくこ)さん 江戸切子作家。東京都出身。上智大学文学部心理学科卒業後、江戸切子の第一人者・小林英夫氏の元で9年間、研鑽を積む。独立後は自然の中にある“美”を江戸切子で表現している。2007年、伝統工芸諸工芸部会展日本工芸会賞を受賞。2010年、日本伝統工芸展日本工芸会奨励賞を受賞。2023年、第70回日本伝統工芸展の鑑査委員を務める
小川郁子(おがわ・いくこ)さん 江戸切子作家。東京都出身。上智大学文学部心理学科卒業後、江戸切子の第一人者・小林英夫氏の元で9年間、研鑽を積む。独立後は自然の中にある“美”を江戸切子で表現している。2007年、伝統工芸諸工芸部会展日本工芸会賞を受賞。2010年、日本伝統工芸展日本工芸会奨励賞を受賞。2023年、第70回日本伝統工芸展の鑑査委員を務める

表面に施された無数の溝や切り込み。それが繊細で緻密な文様となり、光が反射するとキラキラと輝く。宝石のよう、と称される江戸切子は天保5年(1834年)、江戸大伝馬町のビードロ屋加賀屋久兵衛がガラスの表面に彫刻したのが始まりといわれている。

「明治期に英国から西洋のカット技術がもたらされ、現在のような技法が確立されました。私が江戸切子に出合ったのは大学に入学した18歳のとき。地元・江東区(東京)の文化センターで江戸切子の講座が開設されたんです。もともと絵を描いたり、物を作ることが好きで、ガラスに興味があったので応募しました」

と江戸切子作家の小川郁子さん。

「大学に通いながら週1回、4年間。講座に通ううちに江戸切子の美しさ、その奥深さに魅了されてしまいました」

大学を卒業する頃には、就職せずに本格的に勉強をしたいと思うようになり、講師として指導してくれた江戸切子の第一人者・小林英夫さんに弟子入りを申し出るが、

「『弟子はとらない』と。何度も工房に通いやっと許され、9年間、先生の元で学びました。プレーンな器が、切り込みを入れ文様を刻むことで輝いてくる。光によっていろいろな表情を魅せるおもしろさ。独立後は旅先で見た景色や自然、日常的な物などからもイメージが湧き、夢中で制作していました」

そんな小川さんが着物に親しむようになったきっかけは帯留めだった。

「独り立ちして間もなく、着物好きの知人から、江戸切子の帯留めを作ってほしいと頼まれて。帯留めと着物とのバランスをどうするか? 色や大きさ、文様は? と試行錯誤しながら制作しました。その後、百貨店の伊勢丹(東京)の帯留め展に出品することに。まわりから『こんなに素敵な帯留めなんだから、あなたも着物を着ればいいのに』と言われ、母の着物などを着るように。“柔らか物”と呼ばれる付け下げや小紋を着ることが多かったのですが、なかなかしっくりこなくて」

江戸切子の帯留め。上から時計まわりに、「赤 長四角 魚々子」「黄 木瓜 菊繋ぎ」「濃紫 菱型 星」「緑 六角 菊繋ぎ」。繊細で緻密な文様が光る
江戸切子の帯留め。上から時計まわりに、「赤 長四角 魚々子」「黄 木瓜 菊繋ぎ」「濃紫 菱型 星」「緑 六角 菊繋ぎ」。繊細で緻密な文様が光る

そんなころ、工芸の企画展などで知り合い、お世話になったギフトコンシェルジュの裏地桂子さんや染色家の荒木節子さんの着物姿を目にする。

「紬に染め帯をさらりと着こなしていらっしゃる。小物使いも素敵で、これが私の求めていた着こなしだと実感しました。そこから自分で選んだ着物を着るように」

雨のイメージの名古屋帯。タレを茶に染めてもらい土に見立てている。背中の洒落紋がお気に入り
雨のイメージの名古屋帯。タレを茶に染めてもらい土に見立てている。背中の洒落紋がお気に入り

今回の着物は、10年前に裏地さんと訪ねた京都の呉服店で出合ったものだ。

「華やかな品揃えの中、隅のほうにあった反物を広げると柔らかな色が目に飛び込んできたんです。この着物を着たい、まさにひとめぼれですね。ピンクの部分が紅花染めで、黄色や青とのグラデーションも美しく虹が出現したと思ったんです。だから今日のテーマは荒木節子さんの『雨』を連想させる帯と組み合わせて『雨あがりの虹』。帯留めの黄色を日差しに見立てて。どうでしょうか?」

着物と帯、そして小物の組み合わせを考え、悩む時間も楽しい、と小川さん。

「出かける場所や会う人に見合った着物と帯を選び、最後に帯留めを決める。帯留めは小さなものですが、全体を引き立てる役割があると思います。主張しすぎてもいけませんが、ワンポイントにすることで引き締まる、そんな存在にしたいです。個展などでは自作の帯留めを着けて、着物で会場に立つことが多いですね。お客さまに帯留めのイメージがわかってもらえますし、着物と帯との相性も見てもらえます。そしてなにより、来てくださった方に着物でおもてなしの心を表したい」

『クロワッサン』1161号より

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