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「TZEN」「ATELIER MATCHA」代表・長尾千登勢さんの着物の時間──伝統と現代。二つのお茶を、二つの着物スタイルで行き来して

今回の「着物の時間」は、広告代理店「電通」でCMプランナー、PRディレクターとして活躍後、2021年、「TZEN」を創業。伝統文化、伝統産業を新しいアプローチでPRする茶道裏千家准教授・長尾千登勢さん。

撮影・青木和義 ヘア&メイク・遠藤芹菜 着付け・奥泉智恵 文・西端真矢

幼少期を南アフリカで過ごした私を象徴する、アフリカ模様の着物と帯です

長尾千登勢(ながお・ちとせ)さん 「TZEN」「ATELIER MATCHA」代表。広告代理店「電通」でCMプランナー、PRディレクターとして活躍後、2021年、「TZEN」を創業。伝統文化、伝統産業を新しいアプローチでPRする。同時に抹茶カフェ『ATELIER MATCHA』を開業。茶の湯に関するワークショップやオリジナル商品も展開する。茶道裏千家准教授
長尾千登勢(ながお・ちとせ)さん 「TZEN」「ATELIER MATCHA」代表。広告代理店「電通」でCMプランナー、PRディレクターとして活躍後、2021年、「TZEN」を創業。伝統文化、伝統産業を新しいアプローチでPRする。同時に抹茶カフェ『ATELIER MATCHA』を開業。茶の湯に関するワークショップやオリジナル商品も展開する。茶道裏千家准教授

銀座の南の端っこ、8丁目の一角に行列の絶えない抹茶カフェがある。『ATELIER MATCHA』。2021年、広告代理店でPRディレクターを務めていた長尾千登勢さんが開業した。20代から茶の湯を学び、抹茶を深く愛していた長尾さんは、コロナ禍で全国の茶会が中止になり、苦境に立つ抹茶業界を目の当たりにして胸を痛めた。販路を作ろうと開業を決意。当初こそ苦戦したが、現在は鎌倉、そしてベトナムへも支店を広げている。

さて、茶の湯には着物が欠かせないが、裏千家の准教授免状を持つ長尾さんだから、

「お茶向きの着物は一通り揃えています。色無地、季節の花の柄の付下げ、江戸小紋、有職文様の帯……青が好きで自分のラッキーカラーにしているため、水色や紺色など青系の着物が多めです」

一方、店で開催するお茶のワークショップで講師を務める際は、紬や小紋など、いわゆる“ふだん着物”を選ぶ。

愛用の縮緬地の大小風呂敷。今日の着物と同様、呉服店を営んでいた叔父が名入りで誂えてくれたもの
愛用の縮緬地の大小風呂敷。今日の着物と同様、呉服店を営んでいた叔父が名入りで誂えてくれたもの

「こちらも青系を中心に、帯は半幅をよく締めています。ペガサスやシャボン玉など遊び心のある模様、インドネシアのバティックや、ウィリアム・モリスのテーブルクロスから仕立てたものも。特にアジア出張へ出る際には、何しろ蒸し暑いので半幅が一番、そして着物は単衣が中心です。先日はベトナム店でワークショップを開きましたが、着物の人がお茶を点ててくれた、と、皆さん特別な体験に感じてくださって。やはり着物は日本文化のアイコンなのだと実感します」

ワークショップではテーブルでお茶を点てることも多く、どうしても袖がもたつきがち。あえて裄の短い着物を選ぶこともあるという。

「足元も、ふだん着物の日には『メゾン・マルジェラ』の足袋ブーツを履くこともあるんですよ。さくさく歩き回れて快適です」

そんな長尾さんのふだん着物には、実はお手本がある。思想家の鶴見和子さん。長尾さんの出身大学で教壇に立ち、薫陶を受けた。

「父の仕事の関係で、私は中学まで南アフリカで過ごしました。現地では頻繁にパーティーが開かれ、母も大柄の華やかな着物を着て、もてなし役を務めて。だから私は着物は晴れの日の衣服だと思っていたんです。ところが鶴見先生は渋い紬などをお召しになって、毎日教壇に立たれている。自分はずっと着物で育ったのだから、洋服ではなく着物。何も特別なことじゃないんだ、ということを折々仰っていました。つまり、着物が自然、日常だということですよね。こういうふうに着てもいいんだ、ととても新鮮で、『かっこいいね。私たちも60代になったら毎日着物で過ごそうよ』なんて、同級生と憧れていました。鶴見先生の姿が私の原点です」

そんな長尾さんは、今日、着物も帯も非常に個性的な一揃いをまとう。大阪で呉服店を営んでいた叔父が、姪っ子のためにと職人さんを率いて創作した一式。テーマは、そう、“アフリカ”だ。

とぼけたような表情が愛らしいアフリカの動物たち。シマウマも描かれ、特に午年の今年は活躍しそう
とぼけたような表情が愛らしいアフリカの動物たち。シマウマも描かれ、特に午年の今年は活躍しそう

「グレーの縮緬地に型染を施した着物は、よろけ縞、万筋、撒き糊散らし、三つの和の伝統模様の型を使っていますが、こうやってデザインされると不思議とアフリカ風に見えますよね。着物を知り尽くした叔父ならではの仕事だと感じます。一方、帯は、どこか抜け感のある筆致でアフリカの動植物を描いていて、こんな描き手を知っているのも、やはり叔父ならでは。母から譲られた翡翠の帯留めとクラシカルなバッグ、それぞれのきっぱりとした緑と黒を差し色にしました」

こうして時に正統に色無地をまとい、時にカジュアルに足袋ブーツで街を急ぎ、東京からアジアまで。2020年代、長尾さんのリアルな着物姿には、恩師の精神が確かに息づいている。

『クロワッサン』1159号より

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