茶道家・深澤里奈さんの着物の時間──茶人として、茶の湯を中心に据えて着物を楽しんでいます
撮影・青木和義 ヘア&メイク・遠藤芹菜 着付け・奥泉智恵 文・西端真矢 撮影協力・ACホテル・バイ・マリオット銀座
色留袖に比翼を入れず、訪問着へとドレスダウンして楽しんでいます
「東京から軽井沢へ移住し、2年前に茶室がある新居が完成しました。落ち着いてから、手持ちの着物を総ざらいしたのです」
そんなふうに深澤里奈さんは話し始めた。茶の湯「江戸千家」家元直門で15歳から茶の湯を学び、フジテレビアナウンサーとして活躍後、2009年に『tea journey』を立ち上げた。川上名心宗匠が提唱する「自宅の茶」を哲学の根幹に据えながら、茶の湯の〈入り口の入り口〉として、暮らしの中で茶に親しむためのテーブル茶を伝えたかったためだ。2021年、長年の夢だった自然の近くでお茶のある暮らしを実現するため、軽井沢へ移住。茶室完成を機に、正式に江戸千家の教授として教場の登録をした。
その後、お茶に欠くことのできない着物を「出産、育児で遠のいていたけれど、ちゃんと見直さなくては」と、総ざらいすることにした。手持ちの着物を見直すと、今の自分には沿わない着物が多かったり、逆に茶の湯に必要な着物が案外少なかったりすることに気がつき、不要なものは譲るなどして手放した後、必要なもの、例えば単衣の紋入り色無地などを誂えることにしたという。
そんな深澤さんが今日まとうのはその総ざらいを経て購入した色留袖だが、出合いは20年前にさかのぼる。
「着物スタイリストで呉服店も営む、同門の“茶友”に誘われ出かけた着物の展示会。澄んだ地色に群鶴文様が控えめな金糸使いで表現されているこの反物にとても惹かれました。しかしそれは色留袖で、当時は年齢的に若く、もっと先に必要な着物があるのではとアドバイスを受け、見送りました。それから15年ほど後、娘の七五三で彼女に着物をお願いした際、偶然お借りすることができて。レンタル用に彼女が仕入れていたのです」
そして必要な着物を何枚か誂えていく過程で、改めて自分がまといたい着物を考えた時、頭に浮かんだのがこの色留袖だった。その友人に尋ねたところ、レンタル用にしたものの、深澤さんしか借りていないことが分かり、購入させてもらえることに。
ちょうどその頃、江戸千家十一代襲名記念茶会が東京・護国寺で行われることとなり、お手伝いに入る門人は深澤さんを含め、訪問着を着用することが決まった。そこで、「江戸千家十一代家元の御母堂、雲鶴先生のお名前にちなんで」、〈鶴〉が描かれたこの色留袖を、比翼を取ることで訪問着の格に近い装いとして着ることにしたのだそう。
「襲名記念茶会では古典模様の袋帯を、今日はパーティーにお招きを受けたという想定で、ややモダンな袋帯を合わせてみました」
茶の湯を中心とした着物ワードローブを組み立て直している深澤さんは、自分の教訓をもとに、つまずきやすいポイントを分かりやすく伝える着物の勉強会も開催している。
「茶の湯にふさわしい着物とはどんなものか、そもそも自分に似合う色は何色で、どのように選ぶべきなのか、各分野の専門家を講師としてお招きし、私もお弟子さんたちと一緒に学んでいる最中です」
ダイナミックに変化する軽井沢の自然を身近に感じ、お茶を点てられることが日々の楽しみだという深澤さん。
「茶の湯を暮らしの軸にもつ楽しさを真摯に伝えていけたらと願っています」
『クロワッサン』1157号より
広告