今の自分の本当の体調を知る。漢方薬局に相談に行こう
撮影・三東サイ イラストレーション・柿崎こうこ 構成&文・松本あかね
相談する人
柿崎こうこ(かきざき・こうこ)さん
イラストレーター。雑誌や書籍、広告を中心に活躍。暮らし、美容に関するエッセイや取材ルポも人気。企業の広報誌やオンライン等で連載も手がける。
訪れたのはこちら
医王堂薬局
上質な生薬と古典に則った処方を大切にする漢方薬局。漢方薬・生薬専門薬剤師の飯田敏雄さん(左)、自然薬師の飯田岳雄さん(右)。この日は敏雄さんが相談にのってくれた。相談は電話やHPから予約を。
これまで近所のクリニックで漢方薬を処方されたことはあっても漢方薬局に相談するのは初めて、と柿崎こうこさん。「50代半ばを迎えて60代の自分を思い描くようになったのですが、もっとやりたいこともあるし、仕事面でもひと頑張りしたい。もし、今から体のためにできることがあればぜひやってみたい」と話してくれていたものの、この日はやや浮かない表情で現れた。「実は数日前から鼻に違和感が……」
聞けば昨年秋から年末にかけて副鼻腔炎→インフルエンザ→コロナと立て続けに罹患。その後、急激に体力が落ちてしまった。その副鼻腔炎が再び姿を現したことで、改めて体を見直さなくてはという気持ちに。
「今日は自分の体の本当の状態を把握したい。そしてもっと元気になるために何ができるかを知りたいと思います」
1 問診
さっそく「問診」からスタート。柿崎さんが副鼻腔炎の兆候と昨年の経緯を伝えると「疲労というのはどの程度? 横になりたいくらい?」「体は冷えますか。寝汗は?」と飯田敏雄さんから一連の質問が。さらに「舌を見せてください」。これは舌の状態から目の色、顔色、話し方など全体の様子を観察する「望診」という漢方特有の診断法で、本人に自覚のない不調を観察することが目的。果たしてその見立ては? 「総じて健康。副鼻腔炎もまだ軽い段階ですね」。ただし、気になる点も。睡眠についての「眠りが浅く、ずっと夢を見ているような感じ」という答えに「緊張感が高いですね」と首を傾げる。「常に仕事をしていないと不安。少しストレスがあったほうが頑張れますよね?」と柿崎さん。「それはずっと戦闘態勢でいるのと同じですね。緊張しっぱなしで休めない。そこに矛盾があるから頑張りすぎてしまうのでは? さらに夏の暑さも加わり、疲れから体の弱い部分が出た。副鼻腔炎はそれだと思います」(飯田さん)
2 調剤
最初に提案されたのはドクダミのお茶。炎症を抑え、民間療法で蓄膿症の根治によいとされているもの。さらに「これ以上進行しないようにしたい」という柿崎さんの要望で「柴胡桂枝湯」が処方されることに。抗炎症・抗ストレス作用を持つセリ科の植物など9種の生薬を調合し、風邪や胃腸の不調、ストレスまで守備範囲の広い “万能薬”だそう。さっそく調剤室で調合が始まります。
3 指導
生薬の煎じ方の説明後、養生についてお話が。「食事は季節の野菜を中心に、よく噛んで量は軽めに。甘いものは副鼻腔炎の大敵なので控えてくださいね。あとは頭や目の使いすぎを避けること。自然の中で体を動かして汗をかき、心と体の風通しをよくしましょう。休息をとるメリハリも大切です」。それを聞いて「がんばるより、“緩める”ことが必要だったんですね」と柿崎さん。「そう。そのほうが生き生きして、意外と動けるようになるかもしれませんよ」
漢方薬を飲み始めて、何が変わった?
取材当日の夜から微熱が出て、このまま悪化するのではとヒヤヒヤしたのですが、5日分の処方を飲み切ったところでほぼ回復し、驚いています。抗生剤の場合はパッと楽になりますが、漢方薬を飲むとじわじわと確実に元気になっていく。生薬の力を借りて自分自身の体が治しているんだと実感しました。薬を煎じる手間が心配でしたが、生薬の力を体感し手間はちっとも厭わないと気持ちが変化。長引いて何カ月も不調な時間を過ごしてきたことを思うと料金にも納得です。これを機に普段口にするもの、食事から見直して自分の体に備わっている治癒力を底上げしたいと思うようになりました。
漢方が身近になるアイテム
ボタン一つで生薬を煎じることができるポットや、高麗人参やなつめを配合した参鶏湯の素、電子レンジで加熱し繰り返し使える塩とよもぎの温灸など、オリジナル商品も店頭に並ぶ。
『クロワッサン』1152号より
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