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今の自分の本当の体調を知る。漢方薬局に相談に行こう

日本の伝統医療として長い歴史を持つ漢方。いつもの不調をあきらめず根本から元気になるために、漢方薬のはじめの一歩をご案内。イラストレーター・柿崎こうこさんが、神奈川県横浜市にある医王堂薬局を訪ねます。

撮影・三東サイ イラストレーション・柿崎こうこ 構成&文・松本あかね

今の自分の本当の体調を知る。漢方薬局に相談に行こう

相談する人
柿崎こうこ(かきざき・こうこ)さん

イラストレーター。雑誌や書籍、広告を中心に活躍。暮らし、美容に関するエッセイや取材ルポも人気。企業の広報誌やオンライン等で連載も手がける。

今の自分の本当の体調を知る。漢方薬局に相談に行こう

訪れたのはこちら
医王堂薬局

上質な生薬と古典に則った処方を大切にする漢方薬局。漢方薬・生薬専門薬剤師の飯田敏雄さん(左)、自然薬師の飯田岳雄さん(右)。この日は敏雄さんが相談にのってくれた。相談は電話やHPから予約を。

神奈川県横浜市青葉区しらとり台1-2 TEL:045-984-3247(営)9時30分〜19時30分 日祝・年末年始休

これまで近所のクリニックで漢方薬を処方されたことはあっても漢方薬局に相談するのは初めて、と柿崎こうこさん。「50代半ばを迎えて60代の自分を思い描くようになったのですが、もっとやりたいこともあるし、仕事面でもひと頑張りしたい。もし、今から体のためにできることがあればぜひやってみたい」と話してくれていたものの、この日はやや浮かない表情で現れた。「実は数日前から鼻に違和感が……」

聞けば昨年秋から年末にかけて副鼻腔炎→インフルエンザ→コロナと立て続けに罹患。その後、急激に体力が落ちてしまった。その副鼻腔炎が再び姿を現したことで、改めて体を見直さなくてはという気持ちに。

「今日は自分の体の本当の状態を把握したい。そしてもっと元気になるために何ができるかを知りたいと思います」

1 問診

初回は30〜45分かけて困っている症状についてじっくり話を聞き、その人にとって最適の処方を導き出す。「確かに週末出かけたり、人に会ったりする気力もなかった……」。問診は自分自身の状況を振り返る機会にも
初回は30〜45分かけて困っている症状についてじっくり話を聞き、その人にとって最適の処方を導き出す。「確かに週末出かけたり、人に会ったりする気力もなかった……」。問診は自分自身の状況を振り返る機会にも

さっそく「問診」からスタート。柿崎さんが副鼻腔炎の兆候と昨年の経緯を伝えると「疲労というのはどの程度? 横になりたいくらい?」「体は冷えますか。寝汗は?」と飯田敏雄さんから一連の質問が。さらに「舌を見せてください」。これは舌の状態から目の色、顔色、話し方など全体の様子を観察する「望診」という漢方特有の診断法で、本人に自覚のない不調を観察することが目的。果たしてその見立ては? 「総じて健康。副鼻腔炎もまだ軽い段階ですね」。ただし、気になる点も。睡眠についての「眠りが浅く、ずっと夢を見ているような感じ」という答えに「緊張感が高いですね」と首を傾げる。「常に仕事をしていないと不安。少しストレスがあったほうが頑張れますよね?」と柿崎さん。「それはずっと戦闘態勢でいるのと同じですね。緊張しっぱなしで休めない。そこに矛盾があるから頑張りすぎてしまうのでは? さらに夏の暑さも加わり、疲れから体の弱い部分が出た。副鼻腔炎はそれだと思います」(飯田さん)

2 調剤

現在、日本で認可されている生薬は300種余り。古来より伝わる配合に従い、薬味箪笥から生薬を1種類ずつ量って「舟」と呼ばれる容器に1日分ずつ入れていく。1日に1包を煎じて3回に分けて服用する
現在、日本で認可されている生薬は300種余り。古来より伝わる配合に従い、薬味箪笥から生薬を1種類ずつ量って「舟」と呼ばれる容器に1日分ずつ入れていく。1日に1包を煎じて3回に分けて服用する

最初に提案されたのはドクダミのお茶。炎症を抑え、民間療法で蓄膿症の根治によいとされているもの。さらに「これ以上進行しないようにしたい」という柿崎さんの要望で「柴胡桂枝湯」が処方されることに。抗炎症・抗ストレス作用を持つセリ科の植物など9種の生薬を調合し、風邪や胃腸の不調、ストレスまで守備範囲の広い “万能薬”だそう。さっそく調剤室で調合が始まります。

3 指導

柴胡桂枝湯の処方に加えて、飯田さんの提案の中からドクダミ(生薬名は「十薬」)のお茶、体の自然治癒力を上げる滋養強壮薬として「瓊玉膏」を取り入れることに。こちらは生地黄という生薬をベースに蜂蜜で練り合わせたもの。漢方の処方薬は1日3回分770円〜
柴胡桂枝湯の処方に加えて、飯田さんの提案の中からドクダミ(生薬名は「十薬」)のお茶、体の自然治癒力を上げる滋養強壮薬として「瓊玉膏」を取り入れることに。こちらは生地黄という生薬をベースに蜂蜜で練り合わせたもの。漢方の処方薬は1日3回分770円〜

生薬の煎じ方の説明後、養生についてお話が。「食事は季節の野菜を中心に、よく噛んで量は軽めに。甘いものは副鼻腔炎の大敵なので控えてくださいね。あとは頭や目の使いすぎを避けること。自然の中で体を動かして汗をかき、心と体の風通しをよくしましょう。休息をとるメリハリも大切です」。それを聞いて「がんばるより、“緩める”ことが必要だったんですね」と柿崎さん。「そう。そのほうが生き生きして、意外と動けるようになるかもしれませんよ」

今の自分の本当の体調を知る。漢方薬局に相談に行こう

漢方薬を飲み始めて、何が変わった?

取材当日の夜から微熱が出て、このまま悪化するのではとヒヤヒヤしたのですが、5日分の処方を飲み切ったところでほぼ回復し、驚いています。抗生剤の場合はパッと楽になりますが、漢方薬を飲むとじわじわと確実に元気になっていく。生薬の力を借りて自分自身の体が治しているんだと実感しました。薬を煎じる手間が心配でしたが、生薬の力を体感し手間はちっとも厭わないと気持ちが変化。長引いて何カ月も不調な時間を過ごしてきたことを思うと料金にも納得です。これを機に普段口にするもの、食事から見直して自分の体に備わっている治癒力を底上げしたいと思うようになりました。

今の自分の本当の体調を知る。漢方薬局に相談に行こう

漢方が身近になるアイテム

ボタン一つで生薬を煎じることができるポットや、高麗人参やなつめを配合した参鶏湯の素、電子レンジで加熱し繰り返し使える塩とよもぎの温灸など、オリジナル商品も店頭に並ぶ。

左・漢方薬煎じ器 煎治・LITE 9,790円(ウチダ和漢薬お客様相談センター TEL:03-3806-4141) 中・漢方薬屋の参鶏湯1,080円、右・温灸玉1,980〜2,200円(共に医王堂薬局)
左・漢方薬煎じ器 煎治・LITE 9,790円(ウチダ和漢薬お客様相談センター TEL:03-3806-4141) 中・漢方薬屋の参鶏湯1,080円、右・温灸玉1,980〜2,200円(共に医王堂薬局)

『クロワッサン』1152号より

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