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「なんとなく不調」に向き合う──大人の味方、漢方ってどんなもの?

日本の伝統医療として長い歴史を持つ漢方。いつもの不調をあきらめず根本から元気になるために、漢方薬のはじめの一歩を、北里大学北里研究所病院 漢方鍼灸治療センターの森 瑛子さんに聞きました。

撮影・三東サイ 構成&文・松本あかね

「なんとなく不調」に向き合う──大人の味方、漢方ってどんなもの?
「なんとなく不調」に向き合う──大人の味方、漢方ってどんなもの?

森 瑛子(もり・えいこ)さん
北里大学北里研究所病院 漢方鍼灸治療センター 非常勤医師

医師、医学博士。日本大学医学部卒業。日本医科大学女性診療科産科で産婦人科、北里大学東洋医学総合研究所で漢方の研鑽を積み、現在は産婦人科と漢方の診療を行っている。

ドラッグストアにシリーズでずらりと並んでいたり、町のクリニックでも処方されるなど、私たちに身近な漢方薬。体に優しいイメージがあるけれど、実際、どんなところが頼りになるのか。医師で漢方専門医の森瑛子さんに漢方薬を上手に取り入れるために知っておきたい基礎知識を聞いた。

「2001年に医学部に漢方教育が正式に導入され、漢方の理論や処方を学ぶ機会が確保されるように。その結果、臨床現場で漢方が広く使われるようになり、現在はほぼ全ての診療科で漢方薬が処方されています」

西洋医学との併用も可能なため、臨床現場では西洋医学の診断にはあてはまらない症状に対して、漢方薬が補完的に用いられることも多いようだ。

漢方薬は複数の生薬を組み合わせたもので、現在148の処方に健康保険が適用されている。自由診療の場合、薬局やドラッグストアで販売されている一般用漢方製剤(294処方)に加え、生薬を調剤した煎じ薬まで選択肢が広がる。

「よりその人の体質や症状に合わせた処方が可能になりますし、症状は同じでも、体質などによって処方が異なってくる場合もあります。漢方薬の効果をもっと実感したい場合は、漢方専門医の診療を受けるか、漢方薬局へ相談に行くとよいでしょう」

漢方専門医が在籍しているか、生薬の処方があるのかについては各医療機関のホームページを参照のこと。

「なんとなく不調」に向き合う──大人の味方、漢方ってどんなもの?

こんなとき、漢方を頼ってみたら?

✔ 不調、でも検査結果は「異常なし」

「不調なのに検査をしても異常がなく治療が受けられなかったという理由で漢方外来を受診する方は多いです」(森さん)。漢方医学では診断のための血液検査や画像検査は行わないが、「四診」と呼ばれる診察法を用いて総合的に判断。それによって数値に表れない異常に対しても診断・処方が可能になる。「四診」には問診に加え、「望診(舌、顔色や体格を観察)」「聞診(声のトーンを聞く・においを嗅ぐ)」「切診(お腹や脈に触れる)」がある。

✔ 繰り返す慢性症状、漠然とした体調不良

季節ごとに繰り返す、体調が傾くと起こりやすい、そんな症状も漢方薬を服用することで体質改善から取り組める。「西洋医学では治療法がない場合や治療しても症状がよくならない場合、慢性的な症状や体質とあきらめていた症状の改善などにおすすめです」。不眠、疲れやすい、気圧の変化に影響されるなど病名のつかないような症状にも処方してもらえる。漢方専門医は1人の医師が全科を診療するため、分野をまたいだ相談も可能だ。

✔ 薬が合わない。病院の処方薬が多い

抗生剤を飲んでお腹を下したり、症状が多岐にわたって処方される薬の量に圧倒されたなど、薬の服用にまつわる不安から漢方を選ぶ人も多い。「漢方薬は1つの処方で複数の症状をカバーするように考えられています。副作用、アレルギーが疑われる場合には、煎じ薬でしたら該当する生薬を除いた処方に変更して対応できます」

生薬と薬の種類

〈漢方薬の形状〉
〈漢方薬の形状〉

漢方薬は複数の生薬が配合されている。生薬の材料には植物性、動物性、鉱物性があり、最も多いのは植物性で、花や果実、葉、根などが用いられる。漢方薬の形状は主に4種類で、水で煮出して服用する煎じ薬が伝統的なスタイル。現在は煎じ液を製剤したエキス剤も広く使われている。粉末状の「散剤」、小さな球状の「丸剤」は、煎じずに服用したほうがより効果が得られやすい、あるいは副作用が抑えられるなど、形状にも意味がある。

漢方薬のよくある誤解

Q. 漢方薬と西洋薬、併用はNG?

漢方薬は基本的に西洋薬やサプリメントと併用可能だが、注意すべき点も。「市販の西洋薬やサプリメントには生薬由来の有効成分を抽出・加工して開発されたものも存在します。他の薬やサプリメントを飲んでいる場合は処方医に相談を」。一方で西洋薬同士の併用が難しく漢方が役立つことも。「更年期障害の症状に悩んでいる方で乳がんなどの既往症があり、ホルモン補充療法(HRT)ができない場合は漢方薬治療を考えてみてください」

Q. 費用が高い?

病院で処方される医療用漢方製剤は保険が適用されるが、自由診療の場合、エキス剤は1日400円〜、煎じ薬は1日500〜1,000円程度の費用がかかる。「生薬の輸入価格の高騰などでそれなりに費用がかかるのは否めません。ただ品質の高い生薬を使えることや種類の制約も保険診療より少ない分、効果が期待できるメリットもあります」

Q. 長く飲み続けるもの?

漢方薬はゆっくり効くというイメージがあるかもしれない。「慢性的な症状や体質改善を目的とする場合は、長く飲み続ける必要のあることが多いですが、風邪や足のつりなど短期間で効くものもあります」。慢性症状ではなく、的確に処方されれば即効で改善するケースも。「服用していると『肌がきれいになった』『花粉症がよくなった』など想定外の効果が得られることもあり、服用を続けたいと希望する患者さんもいらっしゃいます」

漢方薬はどこで入手できる?

ドラッグストア

ドラッグストアで取り扱うのは、厚生労働省の認可を受けた一般用漢方製剤に該当するもの。同じ漢方薬でも医療用と比べると成分量が異なる場合がある。エキス剤のほか各製薬会社から多彩な製品が販売されている。

漢方薬局

煎じ薬は漢方専門の薬剤師がいる薬局で調剤してもらえる。症状について問診後、調剤→購入という流れ。多くはエキス剤なども取り扱っているので、処方薬の形状については予算、生活スタイルに合わせて相談を。

クリニック、病院

保険適用の医療用漢方製剤が医師によって処方される。自由診療では、漢方に特化した医師による診断のもと、症状や体質に合ったオーダーメイドの処方を受けられる。専門医の在籍についてはホームページなどで確認を。

『クロワッサン』1152号より

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