発症しやすい病気の兆候に気づくために、人間ドックで注意したい6つの項目
撮影・中島慶子 文・小沢緑子
「若い頃は体に多少ムリが利いた人も、年齢とともにマイナートラブルはつきものになってきます。特に女性ホルモンの恩恵が減る更年期は体がガラッと変わる時期。一層の健康管理が大切です。健康診断の結果にただ一喜一憂するのではなく、将来の健康を守るためのバロメーターと捉えてほしいです」と、女性専用人間ドック「クレアージュ東京 レディースドッククリニック」の総院長で医師の浜中聡子さん。
今回、更年期以降にこそ重要な検診、そしてそれらの結果の見方を教えてもらった。
骨密度
基準値:若年比 88%以上
閉経後に急低下。骨がもろくなる前から検診を
骨の強度を測る骨密度検査。「エストロゲンには骨からカルシウムが溶け出すことを抑える働きがあり、その分泌が著しく減る閉経後から骨はもろくなり始めます。骨密度が低いと生じる骨粗鬆症は高齢者の病と考えられがちですが、50歳以降の女性の10人に1人はいるといわれている、身近な病気です」。そこで定期的に受けてほしいのが、精度が高いデュアルエネルギーX線吸収法(DEXA)。「骨密度の数値のほか、若年比(若年成人平均比値)といって20歳から44歳までの健康な成人の骨密度を基準に比較したパーセンテージで表します」。基準値はA判定が88%以上、70%未満だとC判定で骨粗鬆症と診断されます。
[潜む病気]骨粗鬆症
[検査]骨密度検査(デュアルエネルギーX線吸収法〈DEXA〉):5,500円
腰椎や大腿骨の骨密度を測定する方法。専用の台に横になり、足首を動かないように固定した状態で2分程度寝ているだけ。痛みなどもなく、短時間で終了する。
甲状腺ホルモン
基準値:TSH 0.610〜4.230 μIU/ml
FT4 0.75〜1.45 ng/dl
FT3 2.52〜4.06 pg/ml
更年期の不調と間違えやすいので検査は必須
喉仏の下にある小さな内分泌器官の甲状腺。それを刺激するTSH(甲状腺刺激ホルモン)と、分泌されるFT3、FT4(ともに甲状腺ホルモン)の量から甲状腺の働きを調べられる。「甲状腺の病気は、特に更年期に発症しやすい。疲れやだるさ、発汗、動悸、気分の落ち込みなど、更年期の不定愁訴だと思っていた症状が、実は甲状腺疾患によるものだったということがよくあります」。代表的な病気は、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になるバセドウ病と、低下する橋本病。「TSHの数値と総合して判断しますが、FT3とFT4はバセドウ病は基準値より高く、橋本病は低い。どちらも適切な投薬で症状が改善することがあります」
[潜む病気]バセドウ病、橋本病
[検査]甲状腺ホルモン検査(血液検査):7,700円
採血にて、TSH、FT4、FT3を調べることができる。
子宮
経腟超音波検査で子宮や卵巣の様子を確認
職場や自治体で任意で受けられる子宮がん検診は、子宮頸部の細胞を採取する子宮頸がんの細胞診を単独で行うことがほとんど。
「子宮頸部のがん化した細胞の有無は調べられるものの、子宮や卵巣の様子まではわかりません。更年期以降は卵巣がんや子宮体がんの発症リスクが高まるので、子宮頸がんの細胞診だけでは不充分。腟から入れた細長い器具の先端から出る超音波で、子宮の大きさや内膜の厚さ、卵巣の中も確認できる経腟超音波検査もセットで年1回行ってほしいです」。ほかにも発症する人が多い子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫なども、経腟超音波検査なら見つけることができる。
[潜む病気]子宮筋腫、子宮体がん、卵巣がん など
[検査]婦人科検診A(経腟超音波):8,140円
内診台の上で行う検査。腟からプローブと呼ばれる細い器具を挿入し、超音波をあてて画像化。子宮や卵巣を観察する。
大腸
大腸がんの早期発見のために内視鏡検査を
「女性がかかりやすいがんで死亡率が高いのは、実は大腸がん。40歳以降、年齢が上がるほど発症リスクが高まります」。
大腸がん検診は便の中に含まれる血液の有無で大腸がんの疑いがあるかふるい分けをする便潜血検査が一般的だが、「便潜血検査では早期の大腸がんやがんになる可能性のある前がん病変の小さなポリープまでは発見できません」。大腸の内部を内視鏡で観察する大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を、定期的に受けることをおすすめします」。病変を直接確認できるので、ほかにも良性の大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎など、大腸のさまざまな疾患を診断できる。
[潜む病気]大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎 など
[検査]大腸内視鏡検査(大腸カメラ)・鎮静剤あり:4万6200円
先端に高性能のカメラが付いた細いチューブを肛門から挿入して、大腸と小腸の内部の一部を観察する。鎮静剤の使用の有無は選択可。
乳房
マンモグラフィと超音波をセットで行う
女性がかかりやすいがんの第1位が乳がん。「ピークは40代後半と60代後半で、閉経後に発症する人が多いです」。自治体などで行う乳がん検診は2年ごとが多いが、「乳がんは早期発見で治療できる病気なので、年1回の検診が理想」。マンモグラフィ(乳房X線検査)に加え、より正確に診断するために、乳房の上に器具をあてて反射波を画像化し、乳房内を調べる乳房超音波検査も受けてほしいという。「それぞれ得意分野が違います。マンモグラフィは乳がんの初期症状の微細石灰化(細かく密集したカルシウムの沈着)を、超音波検査は手で触ってもわからないような数ミリのしこりも見つけます」
[潜む病気]乳がん
[検査]マンモグラフィ(3D):1万3200円、乳房超音波検査:7,700円
最新のマンモグラフィは3Dで撮影。奥行き方向(3次元的)に細かくスライスした断層画像が撮れる。乳腺に埋もれた病変の発見に役立つ。一方、超音波はしこりの診断が得意。
女性ホルモン
更年期のどの位置にいるかを知るバロメーターに
血液検査で女性ホルモンの量を測る検査。「更年期は女性ホルモンの量が減ることで、卵巣から分泌されるエストロゲンの主成分・エストラジオールが基準値より低い値に。逆に、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、脳が焦って卵巣に『もっとホルモンを出して!』と司令を送り続けるので基準値より高い値に。今の自分が更年期のどの段階にいるかが数値で明確に判断できます」。また、更年期症状がある場合は、HRT(ホルモン補充療法)で補ったほうがよいか判断する目安にもなる。
[検査]女性ホルモン検査セット:8,800円
採血にて、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、エストラジオール、プロゲステロンの数値を調べることができる。
結果はできるだけ対面で説明を受けよう!
医療機関によっては検査の結果を対面で説明するか郵送するか選べることがあるが、「数値と添えられた説明だけ見ても、どう判断してよいかわからないものは多いはず。できるだけ医師から直接説明を受けたほうが、余計な不安を感じずにすむと思います」。
『クロワッサン』1152号より
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