健康診断の血液検査で、特にチェックしたい4つの項目
撮影・中島慶子 文・小沢緑子
「若い頃は体に多少ムリが利いた人も、年齢とともにマイナートラブルはつきものになってきます。特に女性ホルモンの恩恵が減る更年期は体がガラッと変わる時期。一層の健康管理が大切です。健康診断の結果にただ一喜一憂するのではなく、将来の健康を守るためのバロメーターと捉えてほしいです」と、女性専用人間ドック「クレアージュ東京 レディースドッククリニック」の総院長で医師の浜中聡子さん。
今回、一般的な健康診断、そしてそれらの結果の見方を教えてもらった。
上がってきたら注意したいのが「γ-GTP」「LDLコレステロールと中性脂肪」
γ-GTP
基準値:50U/l以下
肝臓に脂肪が溜まっているサインにも
更年期に数値が上がりやすくなるのが、γ-GTP。肝臓に含まれる酵素で、基準値より高くなるほど、肝細胞が壊れてダメージを負っていることを示す。「女性ホルモン量の低下により代謝が落ちることも原因のひとつ。たとえば、若い頃と同じ高カロリーな食生活を続けると肝臓に過剰に中性脂肪が溜まる脂肪肝となり、肝臓に負担がかかって値が上昇する」。お酒をよく飲む人ほどγ-GTPは上がりやすいが、「飲まない人でも上がることも。内服薬、漢方薬、サプリメントの長期摂取にも要注意」。放置すると肝炎や肝硬変に進行するリスクも。「沈黙の臓器とも呼ばれ自覚症状もないので数値で確認することが大切です」
[潜む病気]肝炎、脂肪肝、肝硬変 など
LDLコレステロールと中性脂肪
基準値:LDLコレステロール 60〜119mg/dl、中性脂肪 30〜149mg/dl(空腹時)
異常値が続くと心筋梗塞や脳梗塞の引き金に
血中に含まれる脂質で細胞膜などの原料となるLDLコレステロールと、体を動かすエネルギー源となる中性脂肪。「ともに体に必要な栄養素ですが、数値が高い状態が続くと、脂質異常症という生活習慣病を招きやすくなります」。きっかけはやはり女性ホルモン量の低下で、体の中で脂質がうまく処理できなくなると、血中の脂質濃度が上がり発症にいたる。「自覚症状がないので、気づかず放置すると血管の壁に余分な脂が沈着し、柔軟性が失われて硬くなる動脈硬化が進みます。心筋梗塞や脳出血などの病気のリスクも高くなります」。予防するには食事で脂質の摂り方を見直し、運動を習慣にすることも必要。
[潜む病気]脂質異常症、心筋梗塞、脳梗塞 など
一方、減少に気をつけたいのは「総たんぱく」「ヘモグロビン」
総たんぱく
基準値 : 6.5〜7.9 g/dl
低栄養状態はフレイルリスクを高める要因に
血中のたんぱく質の総量を示す、総たんぱく。食事で摂ったたんぱく質が分解・合成された成分による数値で、体の栄養状態、肝機能や腎機能の状態を知る目安となる。「年齢とともに食が細くなると、この数値が下がることがあります。たとえば、A判定でも毎年わずかながら数値が下がり、体重減少もあるようなら栄養状態が落ちているということ。良質なたんぱく質をバランスよく摂取する食生活に改善しないと、将来70代、80代になって低栄養から要介護の手前にあたるフレイル(心身が衰えた虚弱な状態)に陥ることも」。たんぱく質の合成に関わる肝臓や、排出に関わる腎臓に疾患がある場合も低下する。
[潜む病気]低栄養、肝臓・腎臓障害
ヘモグロビン
基準値 : 12.1〜14.5 g/dl
貧血か更年期の症状かを見極めるための一助に
赤血球に含まれるヘモグロビンは、鉄とたんぱく質が結合したもので、体のすみずみに酸素を運ぶ役割がある。この数値が低い場合は貧血が疑われる。「更年期は女性ホルモンの乱れから月経過多などが生じ、体内から鉄が過剰に失われて、貧血が起こりやすくなります。ただ、女性は月経があることで貧血の状態に慣れてしまい、数値が低くても気にならず、検査を受けて初めて貧血だと気づく人もいます。症状は疲れやだるさ、気分の落ち込みやめまい、動悸など、更年期の不調と似ていて間違えやすい。原因を見極めるためにも、血液検査でヘモグロビンの数値をチェックすることは大事です」
[潜む病気]貧血(鉄欠乏性貧血)
『クロワッサン』1152号より
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