全身の病気を引き起こす、口腔内の健康について考える【⻭周病がもたらす全⾝の病気】
撮影・小川朋央 イラストレーション・松栄舞子 構成&文・堀越和幸
⻭周病がもたらす全⾝の病気
脳梗塞・認知症
歯周病菌の刺激で血管にプラーク(粥性の沈着物)が溜まるとそれが脳に飛び、血管を詰まらせると脳梗塞に。また最近は歯周病予防が認知症を減らすことも報告されている。
⾻粗鬆症
歯周病は歯肉と歯槽骨を溶かし、最後は顎の骨まで蝕む。それどころか炎症性サイトカインが全身を巡れば骨粗鬆症にも……という因果関係。50歳以降の女性は特に気をつけたい。
肥満
肥満は炎症である、と見る医師は近年多い。それは動脈硬化の一因が肥満であることからもうなずける。そして歯周病菌は炎症を促すので、血流に乗れば肥満はますます加速する。
糖尿病
近頃の糖尿病外来では患者さんに歯周病の有無を聞き、その可能性がある場合は歯科にもつなぐ、というくらいに糖尿病と歯周病は密接。歯周病菌がインスリンの働きを悪くする。
動脈硬化
動脈硬化の原因は老化といわれがちだが、実は歯周病菌による血管の炎症という見方をする医師が昨今多い。脳梗塞、心筋梗塞、いずれのリスクも高まるので、注意が必要だ。
⼼筋梗塞
歯周病が進行すると血管にアテローム(粥腫(じゅくしゅ))を作り、心臓の血管を詰まらせ心筋梗塞に至るというメカニズムは脳梗塞と同じ。動悸、息切れ、不整脈などのサインを見逃さないこと。
肺炎
特に気をつけたい肺炎は誤嚥性肺炎。唾液中の細菌が肺に入ることでそれは起きる。年齢を重ねると、嚥下機能の力は落ちるので、日頃から口内を清潔にするよう心がけたい。
早産・低体重児出産
アメリカの研究データによれば歯周病に罹患していると早産および低体重児出産のリスクが7倍に高まるそう。妊活を考える際には歯科クリニックで受診し、子どもの健康を考えたい。
歯周病は歯ぐきを損傷し歯をなくしてしまうだけではない。近年は全身の疾患と関連のあることがいわれている。
「歯周病菌が毒素を出すと、それを倒そうとする炎症性サイトカインが誘導されます。それらが血流に乗って全身を巡り、内臓や骨、脳や神経などあらゆる器官の炎症を引き起こし悪化させるのです」
糖尿病、動脈硬化、認知症、骨粗鬆症……口の中だけのはずだったことがこんな病気に結びつくとは!しかもさらに怖いのは、
「虫歯は患部が黒ずんだりしてわかりやすいのが特徴ですが、歯周病は“サイレントキラー”と呼ばれるように目立った症状がなく、淡々と悪化していくので厄介です」
最近では全身麻酔が必要な手術をする際には事前に口内の掃除をする病院が増えているが、それも歯周病菌から体を守るため。こと、歯周病については、痛くなったら歯医者に行く、という考えでいると、気づいた時には進行していたということにもなりかねない。
「歯ぐきからの出血が一つの目安になります。そうでなくとも一度歯科医院で調べてみましょう。保険の範囲内で診てもらえますので」
『クロワッサン』1127号より