実はトラブル多発地帯!?デリケートゾーンの悩みに答えます
イラストレーション・いいあい 文・黒澤 彩
更年期ならではの腟まわりのトラブル、放置しては危険です。
更年期以降に起こりやすい、腟まわりや尿の悩み。人にもなかなか相談しづらいし……なんとかしたい!
「デリケートゾーンのさまざまな変化や症状は、更年期を迎えるとすぐに起きるのではなく、徐々になっていくもの。すごく気になるという人もいれば、気づきにくい人もいるようです」とは、産婦人科医の八田真理子さん。
誰にでも起きやすい変化は大きく分けて2つある。まず、ふっくらと肉厚だった腟まわりが、痩せて薄くなり、乾燥してしわしわになる形態的な変化。もう一つは機能的な変化で、腟内のバリア機能を果たしていた乳酸菌「デーデルライン桿菌(かんきん)」の減少が、おりものの臭いや腟の乾燥といった症状の原因になる。
「かつて萎縮性腟炎とか老人性腟炎といわれていた症状と、頻尿や尿漏れなどの排尿障害、性交痛などの性交障害を合わせて、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)と定義されるようになりました。症状は個人差がありますが、基本的な知識を持つことは大切です」
知識を持っていれば日頃のケアや対策ができ、早めの受診にもつながる。
「GSMの考え方が医療の世界に広まったのは、私たち女性が声を上げてきたからです。今の50〜60代の女性は活動的で若々しいですし、その先の人生も長くなっています。体の変化についても、もう歳だからと諦めたり我慢したりせずに、リテラシーを持って前向きに取り組んでいきましょう」
私たち実はこんなことで悩んでいます!
デリケートゾーンにまつわる、こんなお悩みありませんか?
〈デリケートゾーンの臭い・かゆみ〉
「トイレに入ったときなど、自分でデリケートゾーンの臭いが気になります。若い頃には感じなかったような臭い。病気のサインでしょうか?」
腟をバリアしてくれていた乳酸菌の減少が影響。ムレ対策と保湿を見直そう。
腟まわりは場所的にもともとムレやすく、尿や便で汚れやすく、感染もしやすい、まさにデリケートな部分。
「さらに更年期になると、デーデルライン桿菌という腟内の環境を保っていた乳酸菌が減り、細菌性腟炎になってかゆくなったり、尿が腟内に入ってアンモニア臭のするおりものが出たりします。病気ではありませんが、気になるなら更年期の治療に取り組んでいる婦人科を受診してください。腟の炎症を改善するエストリオール腟錠のほか、いわゆるホルモン補充療法やフェムゾーン用のジェルなど、ケアする方法の選択肢も増えています」
かゆみ、臭いの原因は意外なところにも。炎症を起こさないためには、通気をよくすることが重要。尿パッドやおりものシートを常時つけていると、ムレや雑菌の温床になる場合が……。
「まずは尿のトラブルを治すのが先決です。パッドはムレや擦れるのも気になるところ。きつく締めつける下着やガードルも避けましょう」
入浴時には、ゴシゴシ洗うのではなく専用ソープで丁寧に洗うこと、お風呂上がりに保湿することも習慣にしたい。日々のセルフケアを続けることでも不快感を軽減できる。
〈性交痛〉
「40代後半になってから今のパートナーと交際し始めました。実は性行為のたびに痛くて苦痛なのですが、なかなか相手には言い出しづらいです。」
長く使っていない人ほど腟が萎縮している!? レーザー治療という選択肢も。
「『久しぶりにしてみたら痛かった』という人はとても多いですね。加齢に伴い腟粘膜が薄く痩せてきますし、粘液も減ってきますから、痛みを感じやすくなり、出血することもあります」
セックスレス大国の日本。40代以上の半数以上がセックスレスだといわれているが、こうした女性の体の変化も無関係ではないはず。痛みが原因で疎遠になったり、我慢することも避けたいので、まずはパートナーに女性の体の問題を理解してもらうことが必要。
「継続的に性交のある人は、いくつになっても痛くなりにくく、腟の状態もいい傾向がある。いちばんの治療は定期的にセックスをすること。骨盤底筋を使い、粘液も分泌されるので、腟まわりの悩み全般にいいのです」
話さずにいると口が動きにくくなり滑らかに喋れなくなるが、性器も使っていないと萎縮してしまうという。もう手遅れ……という人はどうすれば?
「即効性のある方法としては、腟粘膜の活性化を促すレーザー治療という手も。性交痛や腟のアンチエイジング、排尿障害にも効果が見られます」
レーザーは、ホルモン療法をすることが難しい人にも可能な治療法として注目されている。
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