身近な人も悩んでいるかも。男性更年期について学ぼう
イラストレーション・ワタナベケンイチ 構成&文・中條裕子
体と心と性の問題のうち、注意をしたいのはこんな症状。
個人差が女性以上に大きい、男性の更年期。いったいどんなことに注意をしたらよいのだろうか?
「男性更年期で弱るものには3つの柱があって、心と体、そして性です。テストステロンが下がることで、これらが衰えてくる。中でも、テストステロン量に如実に関係するのが早朝の勃起です。1週間ない人は要注意。1カ月ないとかなりよくない状態だと判断できます。ほかには些細なことで怒りっぽくなったり、イライラしたりなど心の面で起こる症状があります。が、なかなか自分で気づかないことが多い。疲れてるからかな、と思ってしまうんです。妻が先に変化に気づいて『夫が最近おかしい、どうしてなのかネットで調べたら同じ症状が書いてあったので』と言って、男性更年期外来に夫を引っ張るようにして連れてきて受診に至る。そんなことがとても多いです」
男性のほうがイライラや不安を感じていても、それを更年期と結びつけていない場合がままあるという。確かに女性であれば、閉経の平均年齢50歳を境に前後10年という、年代としてわかりやすい目安があるので、その年齢になると「もしや……」という気づきにつながりやすい。
「男性更年期は、実はコロナとの関連も深いのです。後遺症でテストステロンがぐんと下がってしまうと、回復に1年半かかることが、最近わかっています。その間に生じた、単なるコロナ後遺症と混同している場合も。コロナの影響があったとしても、更年期症状なのでテストステロンを注射で補充すると楽になる場合があります」
周囲の人から見て、専門外来を受診したほうがよいのではないか、という基準はあるのだろうか?
「中高年の男性が『自分は鬱かも』と思ったら、心療内科より先に男性更年期のクリニックを受診したほうがいい。テストステロンを補充する注射を2、3本打てば元気になるという人もけっこういますから。一番リスクの高い40、50代で症状が出て悩んでいたら、真っ先に専門外来に来てほしい」
男性の更年期に関しては、自分では気づきにくいからこそ、知識を持った周囲の人が注意を払うことが大切に。
\こんな症状があったら要注意!/
◻︎よく眠くなる、しばしば疲れを感じる。
◻︎怒りっぽくイライラする。
◻︎不安感があり心配しやすい。
◻︎憂鬱な気分になる、落ち込む。
◻︎早朝勃起の回数が減った。
徹夜が多かった、飲み会で飲酒が続いた、コロナに感染した、といった後に症状があれば、男性更年期の可能性が高い。上のリストをチェックして心当たりがあれば、専門外来の受診も検討を。
テストステロンを底上げするためにやっておきたいこと。
長寿のホルモンとも称される、テストステロン。値が高い人のほうが長生きをするのだというが、どのようにしたら上げることができるのだろうか。
「ベースを上げるには、まずは筋トレです。筋肉量が増えると男性ホルモンの受容体も増えるので効果的。軽いのを何セットもやる筋トレが筋繊維を増やすので、結果的にテストステロンは上がります。特に太ももの筋肉を増やすのがおすすめ。サイクリングなどの有酸素運動はいったんは上がるけど、その後また元に戻ってしまいます」
生活習慣の見直しも必要となってくる。当たり前のようだが、気を付けるべきは睡眠と食事というのは鉄則。
「本当によくないのは徹夜。テストステロンがガッツリ下がってしまう。食事では亜鉛を摂るといい。牡蠣は含有量が多いけど、毎日は食べられないので、亜鉛が豊富でコスパもいいキャベツを積極的に取り入れて。あとは肉とにんにくは最強コンビ。いわゆるスタミナ料理といわれる料理はテストステロンを上げてくれるものばかりです」
そして何より大切なのは、パートナーとどんな関係を築くかということ。
「夫を褒めることもすごく大事なので、普段からぜひ。『今日はかっこいいわね』とひと言伝えるだけでテストステロンは上がってきます。男女の関係で言うと、触れ合うことで分泌されるオキシトシンも大切。手を繋いで一緒に外を歩くのもいいでしょう」
『クロワッサン』1127号より
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