●脊椎腫瘍(せきついしゅよう)
脊柱管の外側に腫瘍ができる病気
脊椎(背骨)にできる腫瘍には、血管のトラブルに由来する血管腫、骨を構成する組織から発生する骨髄腫、さらにほかの部位にできた悪性腫瘍(がん)が転移したがん腫の3種類に大きく分けられます。
血管腫や骨髄腫は良性のものが多いのですが、がん腫は比較的悪性が多くなり、腰痛を引き起こす場合、男性は前立腺、女性の場合は子宮・卵巣・乳房など、腰に近い部位にできたがんからの転移が多くなります。
腫瘍が大きくなることで脊椎周辺の靭帯、筋肉、脊柱管(の中の脊髄や馬尾神経など)を圧迫するため、腰が重だるくなったり、痛みやしびれを感じたりし、それらが徐々に激しくなっていくのが特徴です。
このため、良性の場合であっても脊髄麻痺などの症状を伴うようであれば、専門医の診察と治療が必要となってきます。
●脊脊髄腫瘍・馬尾神経腫瘍(せきずいしゅよう・ばびしんけいしゅよう)
脊柱管の内側で腫瘍ができる病気
脊椎腫瘍とは異なり、脊柱管の中を通っている脊髄やその周辺組織、そして馬尾神経に腫瘍ができる病気で、良性と悪性の両方の可能性があります。
脊髄やその周辺組織、馬尾神経に腫瘍ができると、脊柱管の中がその腫瘍によって狭くなってしまい、周辺の神経が圧迫されます。この結果、腰や足に痛みやしびれを感じるようになり、それは腫瘍が大きくなるにつれてひどくなってゆき、症状が悪化することで排尿・排便障害や下肢の麻痺が起きることもあります。このため、腫瘍が良性のものであっても、手術によって摘出するのが一般的な治療法となっています。
レアケースですが、脊髄の中に腫瘍ができてしまった場合は、摘出手術の時に健康な脊髄を損傷する危険性もあるため、腫瘍が小さいうちの早期発見が大切になります。
●椎体炎・椎間板炎(ついたいえん・ついかんばんえん)
椎体や椎間板が細菌感染する病気
細菌に感染することで椎体または椎間板が化膿(かのう)する病気で、その大半は黄色ブドウ球菌が原因とされています。初期の段階ではレントゲンで病巣を確認できないため、血液検査、MRI、骨シンチグラフィーなどを実施して診断します。
抗生物質や消炎剤などを用いた薬物療法が一般的ですが、悪化して病巣に膿(うみ)がたまると骨が破壊されるため、手術での病巣の摘出やその後に骨の移植が必要となります。
そうなると、治癒に半年以上かかるうえ、神経にまで細菌感染が及ぶと脳膜炎や脊髄膜炎などの合併症によって命の危険もある病気のため、早期発見が大切になってきます。
症状は発熱を伴い、咳(せき)や体を動かすと腰に痛みが走りますが、病状が悪化すると、痛みが徐々に強くなっていく場合と、急に激しい痛みに襲われる場合があるそうです。
●脊椎カリエス(せきついかりえす)
脊椎が結核菌に感染する病気
肺に感染して肺結核を引き起こす結核菌が、脊椎に感染することで起きる病気です。人間は結核菌に対する抵抗力が弱いため、悪化して感染が広範囲に及ぶと、椎間板や脊椎を損傷する危険性もあります。
原因が結核菌であるため、感染予防に配慮した施設で、抗結核剤を使った薬物療法が主体となりますが、病状によっては病巣の摘出手術が必要になる場合もあります。
前かがみの姿勢がとりづらく、体を動かすと腰に痛みが走り、足に麻痺が起きる場合もあります。また、夜間になると痛みが強くなる傾向があり、寝ていてもなかなか痛みが治まらないのが特徴です。
特効薬が開発されたことで、結核は過去の病気とされてきましたが、2020年に岡山県と福岡県で結核の集団感染が発生しているため、警戒が必要です。