からだ

頭と体の健康のための歩き方を、関根麻里さんが脳内科医に教わりました。

  • 撮影・森山祐子 ヘア&メイク・上野由可里 スタイリング・繁田美千穂 イラストレーション・ヤマグチカヨ 文・辻さゆり

関根 チクチクと思い当たる節が(笑)。子どもにイライラしてしまうのは、運動負債が増えているからかも……。

加藤 睡眠不足は気づけるけれど、運動不足は意外と気づかないんですよ。今、増えているうつ病も、ウォーキングをすると、かかりにくくなります。

関根 それ、聞いたことがあります。なぜなんですか?

【買い物ウォーキング】食材を買いに行く時は歩きながらメニューを決め、買うものを考えると、脳番地がまんべんなく活性化される。また、商品を眺めながら歩けば、歩数を稼げるというメリットも。

加藤 睡眠時間は7時間を起点として、それ以上短くなるほど、また、長くなるほどにうつ病が増えていくんです。
だけど日中、太陽の光を浴びてウォーキングをすれば、夜は深く眠れて、昼間は脳がしっかりと覚醒します。頭の中にオンオフのスイッチを作れるようになるんです。
さらに、ウォーキングはリズム運動なので、歩いているうちに呼吸が整います。瞑想と同じで、呼吸を整えると、精神状態が改善するというデータがあるんです。

関根 歩く時の呼吸法ってあるんですか?

加藤 瞑想ウォーキングをする時は、ロングブレスをします。
へその下の丹田に注意を向けて、息をホーッと吐きながら、1、2、3と数えながら歩く。呼気を長くしたほうが体に血流が回るので、代謝も上がります。

それから、ウォーキングは自分が働かせたい脳番地にターゲットを絞って実践することも可能なんです。

たとえば僕は家族と会話する時間がどうしても短くなるので、大学生の次男を誘ってしりとりをしながら歩くんです。例えば僕が「猫」と言ったら、次男が「猫、米」という具合に単語を積み上げていく。記憶力もアップするし、20歳の次男とのコミュニケーションも深められます。

関根 一人で歩くのもいいし、誰かと一緒に歩くのでもいいんですね。長女は私よりも記憶力がいいので、今度それをやってみようかな。

加藤 子育て中のお母さんって自分の時間をなかなか持てないから、子どもと一緒に散歩するのもいいですよ。その際に「○○まで行こうね」と目的を決めて歩くのもおすすめです。

関根 確かにそうですね。パン屋さんに行きがてら散歩すると、パンを買いに行くという目的とは別に気分も良くなります。

加藤 それが脳のスイッチなんです。目的を持ってウォーキングをすることによって、頭の中が整理されてリセットできます。歩きながら見る、聞く、理解する、考えることによって、それぞれの脳の番地と結びつきが強化されるんです。
僕は寝る前に解決しなかった問題を思い返してから寝るようにしています。そうすると、起きた瞬間に解決することもあるし、散歩中に突然思いつくこともある。そういう時は、すぐにメモをとる。散歩中に見かける桜の幹の芽をターゲットにして、毎日写真に撮ることもあります。

関根 記録に残すと比べられていいですね。

加藤 撮って記憶に納めておくと、思い出すきっかけにもなるし、認知症予防にもなります。エピソードや楽しい出来事が増えていけば、人間って気分も良くなるんです。

関根 確かにずっと家の中にいるよりも、外に出て刺激があると、どんどん世界も広がりますからね。

【しりとりウォーキング】ウォーキングをしながらのしりとりは、さまざまな脳番地を駆使して答えを出そうとするので、脳全体が刺激される。人と一緒に歩く時はもちろん、一人しりとりも効果的。

運動負債と運動貯金

※歩く距離の基準が1カ月90kmの人の場合

運動不足が蓄積した状態が「運動負債」。歩ける時にはできるだけ歩いて「運動貯金」を作っておきたい。不足し続けると貯金が減って負債になり、さまざまな不調が表れてくる。

ウォーキングは生物である人類の原点。

加藤 歩く時は右脳と左脳の両方を使っているのですが、人によってつながり方が違うんです。実は足の裏も脳とつながっているんですよ。だから僕はいつも5本指ソックスをはいています。足の指ごとに脳のつながり先が違うんです。

関根 実は私も5本指ソックスは20歳くらいの時からはいているんです。

加藤 それはすごい!

関根 皮脂の雑菌がたまりにくくなるから消臭効果もあります。それから、私は子どもの頃からアルカという靴屋さんで私の足に合わせたインソールを作ってもらって使っています。

加藤 子どもの頃に足の左右差に気づけたんですか?

関根 最初は父がその靴屋さんを見つけてきたんです。私は自分の足には何も問題ないと思っていたのですが、足形をとってもらって歩くのを見てもらったら、1センチくらい左右差がありました。そこで、インソールを使ってそれをカバーしようということになったんです。

加藤 左右のバランスがとれるから、脳に足からの刺激が正確に伝わるようになっていいですね。

関根 実は中学生の時、自由研究のテーマに「足の裏」を選んだんですよ。

加藤 それは、おもしろい!

関根 クラスみんなの足裏に墨汁をつけて足形をとってみたら、中3なのに、外反母趾の女の子や扁平足の男の子がいた。その時、足のケアって大切なんだと思いました。

加藤 そんなに若い頃から足に注目されていたとは、さすがです! 
人類は二足歩行で動くことによって情報を得てきました。ところが、インターネットの時代になって、動かなくても情報やお金が入ってくるようになった。
だけど、動くことによって脳の高次機能が成長していくという仕組み自体は変わっていないわけだから、それを忘れてしまうと人類は自分たちの能力を衰えさせてしまうことになるんです。

関根 ウォーキングは生物としての人類の原点でもあるわけですね。私もこれからはもっと歩こうと思います!

【スナップショットウォーキング】ウォーキングは習慣化が大切。毎日同じ場所で木の芽や花、動物などの写真を撮って変化を記録していく定点観測も、ウォーキングを続けていくためのモチベーションになる。

歩きやすい靴と靴下で、今日から歩いてみよう。

「アディクト」5万1700円(アルカ本社 TEL.03・3983・0133) 

関根さんが愛用しているアルカのスニーカー。

1万9800円(アテニア TEL.0120・165・555)

足指をしっかり使って歩けるよう設計されたアテニアの「レザースニーカーBM」

加藤さんも関根さんも共に愛用しているのが5本指ソックス。足の血行が良くなり、むくみ防止の効果も。

関根麻里

関根麻里 さん (せきね・まり)

タレント

東京生まれ。アメリカのエマーソン大学を首席で卒業後、帰国して芸能界デビュー。テレビやラジオ、執筆などで活躍中。著書に『上機嫌のわけ』、翻訳絵本に『リトルレッド』など。

加藤俊徳

加藤俊徳 さん (かとう・としのり)

脳内科医、加藤プラチナクリニック院長

MRI脳画像診断、発達障害・ADHDの診断・治療の専門家で、脳番地トレーニングの提唱者。クリニックとともに「脳の学校」を創業。『最強のウォーキング脳』など著書多数。

『クロワッサン』1066号より

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