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国民病・腰痛の8割以上が実は病名がつかない。そこで歩幅。

長時間の座りすぎや正しくない姿勢。8割を超す、病名がつかない慢性の腰痛に、歩幅を広く歩くことをすすめる理由とは。

撮影/角戸菜摘 文/石飛カノ イラストレーション/川野郁代

安静第一主義が腰痛の悪循環の原因に?

国民病・腰痛の8割以上が実は病名がつかない。そこで歩幅。

腰に痛みを感じたとき、あなたはどうしていますか? とりあえず安静第一? 下手に動くとまた痛くなりそうなので、ベッドの中でじっとしている?

「日本ではまだまだ、そんな安静第一主義が根強く残っています。でも、世界的には腰痛=安静はもはや非常識。休んでいると日常生活動作は低下する一方で筋肉が硬くなり、脳とカラダの神経伝達も悪くなります。するとさらに身体機能や脳機能が低下して、腰痛が慢性化してしまうのです」

と、脊椎外科医の平尾雄二郎さん。たとえば、オーストラリアのビクトリア州の取り組みでは、「腰痛には安静が必要」という住民の意識を改革したところ、安静は最小限レベルになり、障害保険請求や医療費の減少が見られたという。

さて、慢性的な腰痛を抱えている人のうち、はっきりとした病名がつくケースはおよそ15%。残りの85%は病名のつかない腰痛。ヘルニアなどの病名がつく腰痛を特異的腰痛、病名のつかない腰痛を非特異的腰痛といいます。

「腰痛全体の85%が画像などで原因や部位を特定できない非特異的腰痛で、ぎっくり腰や筋膜性腰痛などの機能障害からくる腰痛、あるいは心因性腰痛がこれに当てはまります。脊椎外科は残りの約15%に当たる特異的腰痛の患者さんの手術をするのが主な仕事ですが、非特異的腰痛の予防のために日常生活でできることを提案していくことも重要と考えています」

厚生労働省による平成28年の国民生活基礎調査では、病気やけがでなんらかの自覚症状を訴えている人のうち、男性の症状の1位は腰痛、2位は肩こり、女性の1位は肩こり、2位が僅差で腰痛。

これは長年変わらずの順位で、腰痛はもはや国民病といってもいい症状。そして、その8割以上は病名のつかない腰痛ということ。

8割以上の腰痛は原因を特定できない

国民病・腰痛の8割以上が実は病名がつかない。そこで歩幅。

(A)
心理的要因 + 機能障害(ぎっくり腰、筋膜性腰痛など)
   ↓
要因:姿勢不良、運動不足、座りすぎ、肥満など

(B)
・腰部脊柱管狭窄症
・腰椎椎間板ヘルニア
・腰椎圧迫骨折など
   ↓
整形外科であつかう領域

座っている時間が長い人ほど、 病気や腰痛になりやすい!?

非特異的腰痛のリスクファクターとしては、姿勢不良、肥満、重いものを持つ、長時間のデスクワークや立ち仕事、運動不足、遺伝要因など、さまざま。でも遺伝以外は自分自身でコントロールできる要素ばかり。

「生活習慣と腰痛には密接な関係があります。オーストラリアのシドニー大学で次のような研究があります。22万人の成人男女を対象にした追跡調査で、調査期間中に死亡した人の生活習慣を調べたところ、座る時間が大きく影響していることがわかりました。座っている時間が1日4時間未満の人に比べ、1日11時間以上の人は死亡リスクが最大40%も高かったのです」

長時間座り続けていると、肥満や糖尿病、がんのリスクも高まるという。もちろん、動かない状態が長く続くと筋肉が固まってしまうので、腰痛のリスクも高まる可能性大。

「同じ研究で、世界20か国の成人が平日どれくらい座っているかを調査したところ、日本人は20か国の中で最長の7時間でした。これが腰痛が国民病と言われる原因のひとつかもしれません」

典型的なデスクワーカーの場合、デスクワークとランチで座っている時間は6時間程度。電車やバスで往復1時間座り、帰宅後にテーブルについて夕食、ソファに座ってテレビを見て2〜3時間過ごすとしたら1日9時間以上座っていることに。腰への負担は相当なもの。

腰痛はもはやニッポン女性の国民病?

国民病・腰痛の8割以上が実は病名がつかない。そこで歩幅。

厚生労働省 平成28年度 国民生活基礎調査

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