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ふだんの食事と運動の工夫で、何歳からでも骨は強くなります。

女性に圧倒的に多い骨粗しょう症。
予防はいつから、何から始めたらいい? 
大事な骨を守る秘訣を骨の専門家・太田博明さんから学びます。

文・及川夕子 撮影・黒川ひろみ イラストレーション・松元まり子

女性の弱点は骨。閉経を境にもろくなる。

骨粗しょう症は、高齢になってからの病気というイメージが強く、「予防はまだ先でいい」「自分とはまだ無縁」と思っている人が少なくありません。でも、骨粗しょう症の80%は女性で、圧倒的に女性に多く、骨が女性の弱点であることは間違いありません。

「女性は、45歳前後ぐらいから骨量の減少が始まります。その主な要因は女性ホルモンの減少。女性ホルモンのエストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨が過度に溶け出すのを抑え、骨形成を活発に促す働きがあるのです」と、長年骨粗しょう症の診療にあたってきた太田博明さん。

閉経後は、エストロゲン欠乏により、骨にいい働きがなくなってしまいます。とはいえ、骨は常に新陳代謝を行い、新しく作られているのも事実。

「きちんとケアをすれば丈夫な骨が手に入るのに、放置している人が多いのが問題なのです」

背景には、骨粗しょう症による骨折はがんのような病気ほど深刻ではない、という思い込みがあるのかもしれません。

「ところが、骨粗しょう症から大腿骨の骨折を起こした患者さんの5人に1人は1年以内に亡くなっているのです。大腿骨骨折後の5年生存率は50%、背骨の圧迫骨折では60%。これは乳がんの88.2%、大腸がんの63.7%を下回る驚くべき数字です。骨粗しょう症はがんをもしのぐ、命に関わる病気です。決して軽視していい病気ではありませんよね」

<大腿骨骨折を軽く見ない!>

大腿骨頸部骨折の5年生存率は、主ながんの生存率より低い。

日本人の罹患(りかん)数が多い5つのがんの5年生存率(出典:国立がん研究センター)と、大腿骨頸部(足の付け根)骨折の5年生存率を比較(資料提供:太田博明)。両者の調査の手法・条件が異なるため、単純比較はできないが、大腿骨骨折が命に関わる骨折であり、死亡率を上昇させることがよくわかる。
日本人の罹患(りかん)数が多い5つのがんの5年生存率(出典:国立がん研究センター)と、大腿骨頸部(足の付け根)骨折の5年生存率を比較(資料提供:太田博明)。両者の調査の手法・条件が異なるため、単純比較はできないが、大腿骨骨折が命に関わる骨折であり、死亡率を上昇させることがよくわかる。

70%を切らないようまずは骨密度をチェック。

骨粗しょう症の初期には自覚症状がないため、検査を受けていないと、骨密度の低下になかなか気づけません。

進行すると、ちょっと転んだだけで骨折してしまった、背骨の圧迫骨折によって腰が痛い、背中が丸く変形してきたなど、歩くことにも支障をきたすように。さらには、寝たきりや認知症にも直結する可能性も生じます。

まずは検診で骨密度のチェックを。自治体検診では40〜70歳の女性を対象に、5年刻みで骨粗しょう症検診が行われています。

診断は「YAM(young adult mean:若年成人平均)値」が基準。健康な若い人(20〜44歳)の骨密度の平均値と比べて、どれくらい骨量が減ったかを表します。YAM値70%より大きく80%未満は骨粗しょう症予備群、70%以下になると骨粗しょう症と診断されます。

平均的な日本人女性では、50代のうちにYAM値が80%付近まで落ち込みます。70%以下で骨粗しょう症ですから、50代でも、うかうかしていられません。

「骨密度には、これまでの栄養状況や体重なども関係します。痩せている女性は骨の貯えが少ないことに加え、閉経後の骨の減り方も早くなりますし、母親や姉妹が骨粗しょう症という人も高リスクです。骨粗しょう症予備群に入ってきたら、検診を年に1回は受けたいです。とにかく折れる前に対策を取ることが重要です」

女性の5人に1人が生涯で1回は大腿骨を骨折。
その主な原因は骨粗しょう症。
40歳を過ぎると骨密度はどんどん低くなる。

YAMとは骨粗しょう症の診断基準。健康な20歳から44歳の人の骨密度を100として診断。(資料提供:太田博明)
YAMとは骨粗しょう症の診断基準。健康な20歳から44歳の人の骨密度を100として診断。(資料提供:太田博明)
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