からだ

歯科で聞きましょう。「歯周ポケットはありますか」

歯周病について、正しく知っていますか? 歯を失う前に、手を打ちましょう。治療と啓発に尽力している歯科医師に聞きました。
  • 撮影・大内香織 文・後藤真子 イラストレーション・杉山美奈子

親が若いうちに入れ歯になったという人は、歯周病に注意。

【ひとつでも当てはまったら、歯科で歯周病のチェックを。】

□ 親や近い親族が、若いうちに入れ歯になった。
□ 糖尿病である。
□ 起床時に口の中がネバネバする。
□ 歯ブラシで歯を磨くと血が出る。
□ 口が臭い(硫黄臭、ぬか床のようなにおい)。
□ 歯肉がむずがゆい。痛みがある。
□ 歯肉が赤い。腫れている。
□ 食べ物が噛みにくい。
□ 歯が長くなったように見える。
□ 歯と歯の間に隙間ができた(物が挟まる)。出っ歯になってきた。

【虫歯菌と歯周病菌は別種の菌】

「歯周病菌と虫歯菌は、通常は互いに戦っていて共存共栄しにくい性質」と二階堂さん。虫歯の多い人が歯周病になりやすいわけではありません。逆に虫歯の少ない人は歯科へ行く頻度が低いこともあり、要注意。

歯周病は、歯周病菌によって歯肉や歯槽骨(歯を支える骨)に異変が起こる感染症です。重症化すると歯を失う原因に。けれども、進行するまで大きな症状が出ないのがやっかいな点だと歯科医師の二階堂雅彦さんは話します。

「歯周病は、歯の見た目をキレイにするクリーニングだけでは防げません。突然歯を抜くはめになる人もいます。若い人でもかかるということを、もっと知ってもらいたい。遺伝的要因もあるため、親が40代や50代で入れ歯になったという人は、自分も歯周病にかかりやすいと考え、意識的に歯科でチェックを受けてください」

また自分が歯周病で子や孫がいる人は、若いうちから注意を促して。そうでない人も、時折歯科で「歯周ポケットはありますか」と聞き、状態を確認しましょう。

歯周病は「持病」です。治療後も定期的にメンテナンスを。

【歯周病が進むと、歯周ポケットが深くなる。】

歯周病は歯肉の炎症である歯肉炎と、歯周組織にまで異変が広がる歯周炎を含んだ、歯周病菌による病変の総称です。進むにつれて歯周ポケット(歯と歯肉の間の隙間)が深くなるため、その深さが病気の度合いの目安となります。

「はじめは炎症が起き、進むと歯肉が赤くなり、歯垢(しこう)や歯石もだんだん増え、それに伴って歯槽骨が下がっていきます。
骨が下がると歯肉も下がり、すると歯が長くなったように見えたり、歯がぐらぐらしたりし始めます。歯周炎でも中等度くらいまでは、触るとちょっと出血するくらい。重症化してから、腫れる、痛い、噛めないなどの症状が現れるのです」

口内で歯周病菌が活動していると、硫黄やぬか床のにおいに似た口臭がすることも。きちんと歯磨きしているのに口臭が強いという人は、歯周病かもしれません。ほかにも、前掲のチェック項目を参考に歯科を受診しましょう。

近年、歯周病は全身の疾患との関連性が指摘されています。

たとえば、「糖尿病は歯周病と相互に悪影響を及ぼすことがわかっています」と二階堂さん。

糖尿病の人は、歯周病などの感染症にかかりやすく、悪化させやすいというリスクがあります。一方、歯周病による炎症があると、血糖コントロールがしにくくなるため、糖尿病を悪化させやすいというリスクが。糖尿病の人は、歯周病の予防とケアを心がけましょう。

脳卒中や狭心症、心筋梗塞といった循環器の病気をはじめ、関節リウマチや誤嚥(ごえん)性肺炎、認知症との関連も示唆されています。

「歯周病は予防も大事ですが、一度かかったら生活習慣病と同じように、持病と思って対処してほしい病気です。いったん治療が終わった後も、再発しないよう定期的に歯科でメンテナンスを受けましょう。
もちろん、基本として日々の歯磨きは大切です。ブラッシング圧が強すぎると歯肉が下がってしまうので、適切な圧で、磨き残しを少なくするよう、正しい歯磨きを続けてください」

二階堂雅彦

お話を伺ったのは

二階堂雅彦 さん (にかいどう・まさひこ)

歯科医師。

日本臨床歯周病学会の理事長を務めた。当時、日本歯周病学会と日本臨床歯周病学会が共同で発行した初の公式本『日本人はこうして歯を失っていく』(朝日新聞出版)に携わる。

『Dr.クロワッサン あなたも、すぐできる! 名医の健康法』(2019年9月28日発行)より。

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