豆腐を飛び越えていく!?『豆腐少女』 │山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
ちゃぶ台の上に立つ少女をめがけ、突然、横合いから巨大な豆腐が急進してくる。あわてて画面をタップすると、間一髪、少女はジャンプし、見事豆腐の上に着地する
果たして少女は襲いかかる豆腐の攻撃を、何丁まで回避することが出来るか……を競うゲームアプリ。
私は最初、四丁目の豆腐に激突して終了したが、担当編集者は百四丁まで行ったそうで「慣れれば簡単ですよ」と事もなげにうそぶいた。
なるほど。確かに回を重ねてリズムが掴めてくると、激突を避けて豆腐の数を稼げるようになる。
ゲームの途中でジェット噴射のボーナスが出てきたら、一気に豆腐を二十丁ほど飛び越えることが出来る。 デカい金属の鍋蓋と木蓋が現われることもある。この二つは盾のようにガードに使えて、一回だけ、豆腐とぶつかった時に守ってくれる。
その他にも、豆腐の数が重なるにつれ、新しいアイテムが登場して飽きさせない。
タップして豆腐を飛び越えながら、ふと以前紹介した「DaiPyooon」を思い出した。火の玉を避けながら崖を飛び移るゲームだ。私は93回までクリアして、嬉しさのあまりアプリを保存している。
おっと、そんなことを考えていたら、少女は豆腐に激突! 高層ビルのように積み上がった豆腐の天辺から、カラフルなパラシュートをひろげてゆっくりと降りてゆく……。
その脳天気な絵面には「豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ」という言葉がピッタリかも知れない。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最愛の母と過ごした最期の日々を綴ったエッセイ『いつでも母と』(小学館)。
『クロワッサン』1027号より
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