女性ホルモンが激減する、閉経後のダイエットの心得。
イラストレーション・木下綾乃 文・石飛カノ
[心得3]漢方を利用してみる。
食事と運動を取り入れてもなかなか効果が出ないというときは、漢方薬の助けを借りるのもひとつの手。
「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)という肥満改善、とくに内臓脂肪型肥満に用いられる漢方薬があります。これには褐色脂肪細胞の働きを活性化させたり、白色脂肪細胞の分解を促す作用が期待できます」
褐色脂肪細胞は肩甲骨の周辺にある脂肪細胞で、血液中の脂肪を取り込み、熱エネルギーとして消費する働きをもつ。この細胞がよく働いている人は太りにくく、働きが悪いと太りやすい。
一方、白色脂肪細胞は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられている脂肪のこと。運動によって分解されるが、漢方薬の助けを借りればより分解能力を高めることができるという。
「漢方薬は比較的副作用が少ないので、生活習慣病の方でも使用できます。ただし、薬ですから肝臓に負担をかけることに変わりありません。1年に1度は肝機能のチェックをしながら服用しましょう」
[心得4]女性ホルモンを補う。
一度落ちてしまった基礎代謝を上げ、ダイエット効果を得るためのもうひとつの方法は、ホルモン補充療法(HRT)。女性ホルモンを補充することで、閉経前のように脂質や糖質を代謝してくれるエストロゲンのサポートを再び受けられるようになる。
「HRTにはエストロゲン単独療法と、エストロゲンとプロゲステロンの併用療法があります。子宮がある方は基本的に後者のほうが身体への負担が少ないと思います。エストロゲンを単独で補充すると子宮内膜が厚くなり、子宮体がんのリスクが増すからです」
HRTには飲み薬、塗り薬、貼り薬、注射などさまざまな方法がある。また、利用できない場合もあるので、婦人科のドクターと相談しながら取り入れたい。もちろん、年に一度の定期検診は必須。
「食事と運動、それに漢方薬やHRTを組み合わせることで、閉経後も健康的なダイエットを行うことができます。人生100年時代、こうした工夫でダイエットを進めていきましょう」
HRTを行ってはいけない人
× 乳がん、子宮がんの人
× 血栓症の既往がある人
× 肝機能が低下している人
× 心筋梗塞や脳卒中を起こした人
子宮筋腫、高血圧、肝機能障害などの場合、投与方法や投与量を工夫しながら行われることも。
千代倉由子(ちよくら・ゆうこ)さん●産婦人科専門医、母体保護法指定医。東邦大学大学院産婦人科学科を卒業後、関連病院を経て実家の「池ノ上産婦人科」院長に。幅広い女性の悩みに対応、肥満外来ではダイエットの相談にものる。
『クロワッサン』1013号より