空の青さ、水のきらめき、花々の彩り……一瞬にして消えてしまう美しさを切りとって形にしたら、こうなるのだろうか。研ぎ澄まされているのに温かい。都会的なのに無邪気。そんな和菓子を作るのが、坂本紫穗さんだ。
「目にしたものから得た“印象”を、手を通して仕上げるのが私の仕事。今日は練り切りで椿を。ぽっと口を開きかけたつぼみを女性の美しさに重ねました」
紅茶にも合うんですよね、と紫穗さん。
「意外かもしれませんが、ウイスキーや日本酒、ハーブティーやコーヒー……飲み物とのマリアージュも楽しんでほしい。何となく不安を感じる時代だからこそ、ひとつの和菓子から幸せや愛情を感じてもらいたい。そんなマインドを伝えるのも私の役割のひとつと思っています」
制作するときの集中力は半端ではない。何時間も同じ姿勢でいることも。
「メンタルの面でも体調の面でも、極力ベストな状態で臨むことは作品作りの一環。でも、次第に呼吸も浅くなって、カラダも固まっているのでしょうね(笑)。だから、逆に、ふだんの自分は『無』に戻るように心がけているんです」
15年続けているヨガしかり、ストレッチポールや独自の入浴法しかり。
「カラダがやわらかくいられると、不思議と心もオープンになります。好きな自分でいられるんです。肌も同じだと思います。やわらかい肌でいることは、見た目だけではなくて、手で触れたときも心地いい。よろこびが2倍になるんです」