【しびれ、こわばり、むくみ編】専門医に聞く、40代以降に多い手と指先の疾患と対策。
イラストレーション・shino 文・大澤千穂
しびれ、こわばり、むくみを感じたら要注意!
更年期に多い関節や神経の症状。そこに女性ホルモンが関わっていると話すのは形成外科医の大久保ありささん。
「40歳前後から女性ホルモンの下降が始まり、下降曲線の中にも高低差が出てくる。そのゆらぎが原因と考えています。女性ホルモンがゆらぐと腱を覆う滑膜が厚くなるため滑りが悪くなり、痛みやしびれが現れるのです」
治療法で注目されるのが、エストロゲン様作用を持つ成分、エクオール。
「エクオールでよくなる人は多いです。サプリメントも市販されているので、手に違和感がある人はまずそれを2〜3カ月試してみても。エクオールは大豆イソフラボンを摂れば体内で作れる人もいますが、作れても産生力には個人差があります。検査キットが市販されているので、それで自分の状態を知っておくことも対策に。そしていざ病院へという場合は、手を専門とする『手外科』を受診するとよいでしょう」
指の曲げ伸ばしがカクカクする。曲がらないし、曲げたら伸びない。
⇒ 【ばね指】かも?
指の曲げ伸ばし動作がスムーズにいかなくなった。そんな時、考えられるのが「ばね指」。
「女性ホルモンのゆらぎが原因で指の腱が太く腫れ、腱がトンネルのような『腱鞘』を通る時に引っかかりが生じる状態です。腱が玉のように腫れて腱鞘を通りにくくなるので曲げづらく、腱がなんとか通ると今度は伸ばしづらい。ガクガクとして、ばねのような動きですね。特に親指なら第一関節、他の指は第二関節が大半です」
腱は徐々に腫れるので、腱鞘に引っかかるまで痛みを感じず、ある日、突然不具合に気づく人も。
「ただその前に朝起きた時などに指のむくみやこわばりを感じていたという人がほとんど。指の体操でむくみは一時的には改善しますが、根本的な治療はまず女性ホルモンの補充。そして鎮痛剤や湿布などで症状をコントロールします」
それでも改善しない場合は手術も選択肢になる。
「腱鞘を切る手術です。小さく切開する日帰り手術で根治しますが、指は使う部分なので3カ月ほどは違和感が残ると考えてください。物を握った時にビー玉を挟んだような違和感があるという人も。けれど、軽症のうちからエクオールのサプリメントを摂取しておけば、手術せずに済むことが多い。自分で予防ができて、進行をおさえやすい病気といえます」
第二関節が痛い。関節が太くなり、いつもの指輪が入らなくなった。
⇒ 【ブシャール結節】かも?
指の第二関節が太くなり、変形するのがブシャール結節。
「指の第二関節がこぶのように腫れて変形を生じる疾患です。更年期以降の女性に見られ、家族内発生が多いのも特徴です。お母さんやおばあさんの指も変形していたというケースも多いですね」
自覚症状は痛みと腫れ。ただし痛みの程度は個人差がある。
「つり革を握る時、ふきんを絞る時に痛いという人が多いですが、痛みより前に第二関節だけが太くなり、指輪が入らなくなったことで気づいたという人もいます。治療はエクオールの摂取、鎮痛剤の塗り薬やステロイド剤の注射による痛みの緩和です。繰り返す場合、軽度であれば腱を切開する、または指を曲げる腱を1本切除して動きをスムーズにします。変形が進んでいる場合は、人工関節に置き換える手術になります」
関節の痛み、腫れという点ではリウマチと症状が似ているが、原因は全く別とのこと。
「リウマチは免疫機能の異常が原因とわかっていますが、ブシャール結節は長らく原因不明とされていました。最近になり、女性ホルモンの揺らぎや低下が関係すると考えられてきています。初期では判断がつきにくいので、まずリウマチの検査を。そこで陰性でも加齢だからとあきらめず、エクオールを摂取して様子を見るのも一つの手。それでも改善しない場合は専門医の受診をおすすめします」
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