その日傘をさすと、まるで違う自分になれたような錯覚を起こす。そんなパワーを感じさせる筆使い、鮮やかな色、繊細な刺繡……すべてが “手仕事” だから、ブランド名も「Coci la elle(コシラエル)」。“手” に最大級の愛を込めて、世界にメッセージを発信しているひがしちかさん、なぜ傘なのですか?
「雨や紫外線から守ってくれる傘は、年齢も性別も国籍も関係ない。誰もが必要としていて、誰にも寄り添ってくれる。そういう日常の道具であることが、私にはとても大事なことなんです」
描くモチーフも “私の日常” なのだという。つやつや光る茄子だったり、林の中で見つけた落ち葉だったり、子どもが描いた落書きだったり。
「何でもない日常にこそ、きらきらした美しさがちらばっている。それらが私を通して表れてきているのだと思う」
2年前にアトリエと住まいを東京から長野・八ヶ岳に移し、ポスターや装丁など表現の手段も形も広がりつつある。
「考え方が変わりましたね。150%頑張らなければと思っていたのが、自然の中で暮らすと、人間がコントロールできない、してはいけないことがあることを知りました。長い間、自分は何者でもないと思っていましたが、今、ようやく自分が好きだと言えるようになりました」
自分に目を向ける余裕も。
「肌にも “手” をかける。畑で種を蒔くように、元気に、きれいに育つようにと願いながら、ケアをしています」