【家族でシェア】夫と、家族と、時にはプロに。家事シェア、大平一枝さんの場合。
撮影・徳永 彩 文・一澤ひらり
家事は“ママの聖域”と、家族に思わせない気配りも大切。
昨年、大学1年生になった娘の燈子(とうこ)さんと、家事シェアを始めることにしたのは大平一枝さん。
「燈子が大学生になって夏休みに入ったら家でゴロゴロしてるだけ。それを見て、『うちは共働きなんだから、何もしないなら家事ぐらいやりなさい!』って烈火のごとく怒ったの。それから渋々やりだしたって感じですよね」
そんな燈子さんのやる気に火がついたのは、大平家で23年間使い続けてきた冷蔵庫を、昨年買い替えたのがきっかけだった。
「一枝さんはちょっと片づけができない人だから、冷蔵庫の中がごちゃごちゃだったんです。いつのものかわからない瓶詰とかお漬物とかが奥のほうにあったり夕飯の残り物が入れっぱなしになっていたり。そういうのがイヤで。だから冷蔵庫を買い替えてからは、庫内の整理は私がやっています」(燈子さん)
片づけは苦手と自覚していた母は娘と冷蔵庫の収納に取り組んだ。一緒に100円ショップへ行き、カゴや仕切りを買って収納を工夫。保存容器もスタッキングできるものに統一した。さらに一枝さんが重視したのは、容器が透明であること。
「保存容器は中が見えないと何が入っているかわからないから、可視化することが大切だと気づいたんです。それまでは琺瑯容器を使っていましたが、透明な耐熱ガラスの保存容器のほうがいいよねって娘と話して決めました。これだと中身も残量もひと目でわかるし、見た目もスッキリするんです」
燈子さんは冷蔵庫内をカゴ収納にし、「お好み焼き」とラベルを貼ったカゴには材料やソースをひとまとめにするなど、カテゴリー分けも工夫した。
夫との家事分担をどうするか、それが大きな課題となって。
「キッチンを母親の聖域にしていたらダメですね。娘のおかげで冷蔵庫がすごく使いやすくなりましたから、まかせて本当によかったです」
と話す一枝さん。実は家族との家事シェアには過去に夫との対峙があった。
「16年前、働く仲間3人で『家事場のバカぢから』っていう本を書いたんです。そのとき自分は家事の何がイヤなんだろうと考えたら、洗濯物をたたむのと皿洗いだということに気がついて、『どうしてもこれは無理だから、あなたやって』と、夫にちゃんと話したんですよね。そうしたらやってくれるようになったんです」
一男一女、子どもは2人いたものの当時はまだ幼く、家事労働にいそしめる大人は夫婦2人のみ。妻が苦手な食事の後片づけは夫に引き受けてもらわないと、お互いイライラが募って夫婦喧嘩の原因になる。
「その前からずっとバトルがいっぱいあって、共働きなのにどうして女の人ばっかり家事をやらなきゃいけないのって思ってたし、夫もそういうことを社会問題として捉えているところがあって、育児分担のありかたなどに関心を持っていた。それで私が料理を作ったら、夫は後片づけをするみたいな家の中のルールをひとつずつ詰めていって、家事を分担するようになったんですね。シンクにたまったお皿が原因で喧嘩するのはバカバカしいし、家事は一生ついて回るものだから」
その話を聞いて燈子さんも「そうだったんだ」とびっくり。
「パパはちゃんとやってるよね。お皿洗いと布団を敷くのと洗濯物をたたむのと。早く帰宅できるときは料理も作るし。時を積み重ねてきた結果だね」
冷蔵庫整理は娘に一任。「見える化」が進んで便利に。
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