2年ほど前、歌人の俵万智さんは縁あって宮崎市に移り住んだ。暮らしてみて驚いたのが、食の豊かさだ。
「魚介類も肉も本当に新鮮でおいしいです。何より、野菜がすごい。手頃な価格なのに、味に力強さがあるんです。今日の食卓は全部地元産の食材だった、なんてこともしょっちゅう。日常の食に底力を感じますね」
今回挙げてくれたシンケンズルチェ(ハムとマッシュルームのゼリー寄せ)も、地元で見つけたお気に入り。宮崎市から北に35㎞ほど行った川南町にあるハム・ソーセージ工房『ゲシュマック』のものだ。直営農場で育てた豚から作るハムがぎっしり、惜しげもなく入っている。
「ウチでよくする飲み会に、あるとき友人が持ってきてくれたんです。とにかくハムの旨みがしっかり味わえるところが好き。マッシュルームも絶妙な加減で入っていて、食感もいい。よく冷やした白ワインにも、ビールにも合いますね」
以来、お店で買ったり、お取り寄せをしたり。自宅で息子と楽しむのはもちろん、手みやげに持っていくことも多い。
「見た目が華やかなので、友人のホームパーティーによく持っていきます。スライス済みなので、お皿に盛るだけ。台所を借りなくてすむのも気楽です」
時にはクール便で県外の友人に贈って喜ばれることも。宮崎の味を、ひそかに広めている。
「あまり知られていないけれど、この土地には手間ひまをかけて作られた、レベルの高いものがたくさんあります。宮崎産のキャビアは塩加減も風味も最高で素晴らしい。アボカドもすごくおいしいです。あと、佐土原なすって知ってます? これを焼きなすにすると最高ですよ」
宮崎の食について語りだすと止まらない俵さん。どうやら南国での暮らしを満喫しているようだ。