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古くから利用されてきたはちみつの薬効。

取材・文/石飛カノ 撮影/森山祐子 写真、データ協力/山田養蜂場

紀元前1500年頃に書かれたエジプトの医書のパピルスには、はちみつを含む薬の用法について、147種類の処方が書かれているという。  
傷、やけど、擦りむき、壊血病、座薬、抗炎症剤、変わったところでは円形脱毛症、避妊薬、結膜炎予防のためのアイメイクなどなど。  
古代インドのアーユルヴェーダやギリシャの近代医学の父、ヒポクラテスもはちみつの薬効に触れているほか、イスラム教の聖典、コーランにも、 「神がミツバチに対して、各種の果実を食し、人々の癒しとなるさまざまな色の液体を生み出すよう導いた」  
という記述があるとか。  
内服薬としても利用されていたようで、たとえば、光源氏のモデルの一人と言われている藤原道長は糖尿病だったと考えられていて、「蘇(そ)」というチーズのような発酵食品にはちみつをつけて食べる「蘇蜜」を薬として食べていたらしい。 と、このようにさまざまに利用されてきたはちみつの薬効の中で、最も代表的なもののひとつは抗菌性。はちみつの糖度は約80%と非常に高く、こうした環境では、細菌が繁殖できない。浸透圧によって水分を吸い取られてしまうからだ。糖度80%を保っていることが、常温保存でも腐らずに安心して口にできる理由。  
これはこれで「抗菌」と言えないこともないけれど、実はもっとすごいはちみつの抗菌効果が、現代の科学で明らかにされつつある。

強力な抗菌効果の正体は 過酸化水素という成分。

「強い抗菌性というのは、はちみつに水が加えられて初めて発揮されます。傷に塗ったとき、傷口からしみ出してくる体液が加わるといったようにです。水分が加わるとはちみつ中の酵素によって過酸化水素が発生し、非常に強い殺菌作用を発揮するのです」(中村さん)  
過酸化水素は消毒液のオキシドールに含まれる殺菌成分。そう聞くと、どれだけ強力な抗菌作用をもっているかが分かる。  
過酸化水素が発生する作用は、巣の中のはちみつが空気中の水分を吸って糖度が下がったときの防衛策として、ミツバチがあらかじめはちみつに仕込んでおいた酵素の働きによるもの。大事な保存食を細菌に利用されないようにするための、いわゆるセーフティネット。ミツバチの賢さには、よくよく感心させられる。 「実際、抗生物質ができて普及するまでは、世界中の多くの病院ではちみつが外傷の消毒薬として使われていたことが知られています」(中村さん)  
この他にも、薬として病気の予防として、あるいは美容に役立つアイテムとして、はちみつに期待できる効果効能は数多い。天然の純粋はちみつを常備するということは、いってみれば、頼れる家庭常備薬を側に置いておくことに近いかもしれない。 

はちみつの薬効

古くから利用されてきたはちみつの薬効。

・薬
世界中に残されているはちみつの薬効の記録には、食品というより傷薬などの外用薬、胃薬など内服薬としての効果を記したものが多く見られる。

・抗菌・殺菌
過酸化水素による抗菌成分に加え、はちみつに含まれる有機酸、グルコン酸にも抗菌作用が。これらのW効果が菌や炎症を防ぐ。

・美容
はちみつの保湿作用には美肌効果も期待できる。古代インドでは、容姿を美しくするためにはちみつを摂るべしという記述も。

・予防
各種ビタミンや豊富に含まれるポリフェノールの抗酸化作用で、さまざまな病気の原因になる活性酸素に対抗。意外なところでは虫歯予防にも。

古くから利用されてきたはちみつの薬効。

『Dr.クロワッサン はちみつが健康と美容に効く!』
— マガジンハウス 編
定価:810円 (税込)

はちみつの“薬効”を最大限に生かす、具体的な方法をシーン別に紹介します。
さあ、今日から「はちみつ生活」始めましょう!

お話を伺ったかたがた
・中村 純さん 玉川大学ミツバチ科学 研究センター教授
・前田京子さん エッセイスト ベストセラー『ひとさじ のはちみつ』著者
・藤善博人さん 山田養蜂場 養蜂部顧問
・鳥家恵莉さん 山田養蜂場 サブチーフ

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