うなりを上げるモーター音が工房にこだまする。木工旋盤に取り付けられて高速回転する材木から、ゴーグルをかけた須田二郎さんが独特のノミでくりぬくように器を削り出していく。ウッドターニングと呼ばれるこの木工技法から須田さんが作り出すのは、木の命に寄り添うような器やカトラリー。
「僕が使っているのは、主に荒れ果てた雑木林や宅地造成のために切らざるを得なかった木。それを乾燥させず、生木のまま加工しています」
と、静かな口調で語る須田さん。
“一銭にもならない”と打ち捨てられた木を車に積んで持ち帰り、水分を含んだままの丸太をチェーンソーで切るところから須田さんの器作りは始まる。
「この仕事をする前は自然農法で作物を作っていましたが、森林組合の手伝いで木こりをしていたんです。そこで林業の衰退を目の当たりにしました。これまで雑木林の木は炭焼きでうまく循環していたけれど、炭焼きが廃れて里山を保護できなくなり、雑木林は荒れ放題になった。邪魔物扱いされる木をなんとかしたくて、木を生かすために器を作るようになったんです」
独学で木工品を作り始めたのは40代を迎えてから。早くはないスタートだったが、木の器を通じて日本の森を甦らせたいという須田さんの思いは熱い。