【俳優・松たか子さんに聞いた】町との深い関わりの中で紡がれた物語の彫刻家役に──映画『ナギダイアリー』
撮影・シム・ギュテ スタイリング・杉本学子(Whitney) ヘア&メイク・須賀元子 文・黒瀬朋子
カンヌ国際映画祭やヴェネチア国際映画祭の常連である、深田晃司監督の最新作『ナギダイアリー』に出演している松たか子さん。岡山県奈義町をモデルにした「ナギ」を舞台にした物語で、松さんは、畑仕事や牛の世話をしながら創作活動をする彫刻家の寄子を演じている。
「深田監督が奈義町に通い、一時期は住んでいらしたこともあるそうで、地元の方と交流しながら、大切に書かれた脚本です。撮影でも町の方々にたくさん協力していただきました。私は東京で生まれ育ったので、どうしたらナギの人に見えるのだろう、と。寄子は一時期東京に住んだことのある設定だったので、そこには助けられましたね」
東京から寄子を訪ねてきた、弟の元妻の友梨(石橋静河)が、ナギに着くなり「外国より遠い」と思わず言ってしまうほどの、静かな山間の町である。
「映画にあるとおり、自然豊かなとても穏やかなところでした。山深いところもあれば、とても近代的な現代美術館があったり、畑の真ん中に突然おしゃれなパン屋さんがあったり。美術館に併設した図書館の居心地がよくて、休みの日に通っていました」
ナギには自衛隊の駐屯地があり、静かな町に不似合いな訓練の砲弾の音が時折鳴り響く。町は駐屯地を受け入れ、その恩恵を受けつつ共存している。都会とは異なるこの町で、寄子は自身のセクシュアリティについて周囲に語ることなく暮らしている。映画はそれらを、在る現実として淡々と描いていた。寄子と友梨の、互いを認め合っている関係がとても素敵だ。
「二人が少し言い争いになる場面があるのですが、監督はとても優しい方なので、寄子が一人にさせてほしいと友梨に頼み『ごめんね』と付け加えるところを笑顔で言ってみてくださいとおっしゃったんです。でも、そこでは微笑まずに、ムッとしてお互い目も合わせない(笑)。それは、たとえ愛想笑いをしなくても信頼しているから、そんなことで二人の関係は壊れないとお互い思ったからなんですね。結局そのまま使っていただきましたけど、面白いなと思いながらお芝居していました」
この映画は、何か明確なメッセージを提示するような話ではないので、自由に感じてもらえたらいいと思う、と松さんは続ける。
「いろんな世代、性別、立場の人たちがナギを出ていくようで出ていかなかったり(笑)。外に出ていくのも戻るのも大丈夫、とありのままを認めてくれるようです。これでいいんだという気持ちになっていただけたらよいのかなと思っています」
『ナギダイアリー』
「ナギ」で一人彫刻を作る寄子の元に、東京と台湾で活躍してきた建築家で、元義妹の友梨が訪れた。ナギで過ごし、人々と出会う中で、友梨は自分自身についてある気づきを得る。
出演:松たか子、石橋静河、松山ケンイチ
9月25日(金)より東京・新宿ピカデリー、ユーロスペースほか全国ロードショー。
『クロワッサン』1172号より
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