〈新田恵利の看取りの話 Vol.4〉トホホな証明写真——世界一周の夢と「要介護」にならないための小さな努力
文・クロワッサン編集部
先日、パスポートの再申請に行ったら、見事なまでにいくつものトラブルが……。ホント、トホホな1日でした。
旅行が大好きで、年に数回、海外、国内問わず出かけていました。コロナ禍の2年間の自粛を経て、その後はすっかりペースも落ちパスポートの出番も激減。そんな中、夏の旅行を予約する際にパスポートの期限切れが発覚! 再申請が急遽必要になりました。
近所にある証明写真機で顔写真を撮り、マイナンバーカードを持って市役所の窓口に行くと「あ、この写真はダメだと思います。後ろがグラデーションだから」。
……ん? なんで? だって証明写真の種類を選ぶ時、パスポート用を選んだのに? そう説明すると「じゃ一度、申請してみます? 判断するのは私たちじゃなく県ですから……」。「このまま申請してダメだった場合、申請のやり直しですよね。受け取りまで2週間と言われてるけど、それ以上の時間がかかりますよね?」と聞けば「そうなります」と即答。
じゃあ、撮り直すしかない。市役所の中にも証明写真機はあったけれど、私の格好に問題アリ。当日はDIYの予定だったから、スッピンに汚れても良いヨレヨレのTシャツ。この姿で10年のパスポート写真は撮れません。
「じゃ、出直します」と言ったのが金曜日。翌月曜日、買ったばかりのトップスを着て、ファンデーションだけ塗って市役所へ(2拠点生活を始めたばかりで、住民票がある家にはメイク道具も洋服も揃っていないのです)。今度は市役所にある機械で顔写真を撮影し、受付に提出すると「あ、前髪が目にかかってますね。コレじゃダメかも。それに顔が小さいわ」。え? え? え? そんな事、3日前の受付では言われてませんよ。第一、これより前髪が短いなら、オン・ザ眉毛! 高校受験用の証明写真で言われた以来だわ。
「え、じゃ前髪を切れという事ですか?」「いえいえ、しっかり分ければ大丈夫。それより顔が2ミリ小さいの」と定規を当てて私の顔の大きさを測っていた。顔は大きく出来ないわ!!と声を大にして言いたかったけれど「じゃ、どうすれば?」苛立ちを隠して聞くと「撮影後に大きさを調整出来たはずなんですけど……」。そんな機能には全く気がつかなかった。後ろの壁に背中をつけて下さい、3秒後に撮ります、みたいなアナウンスがあって、その通りに撮影したのに。そういえば昔の機械には顔の形が目の前のガラスに描いてあって、「この中に顔を入れて下さい」と言われた気がする。でも今回は枠もアナウンスもなかった。
納得がいかなくてイライラは怒りに変わってきた。「前髪を分けて、もっとカメラに近づいて写真を撮り直せば良いんですね」と、怒りを押し殺して聞いた。もちろん職員の方が悪い訳ではないと分かっているけど、最初にキチンと全てを、分かりやすく説明して欲しかった。「良ければ、写真館で撮った方が……。ちょっと高くなるけど。ちゃんと撮ってもらえるし」。既に2,200円をドブに捨ててるんです。今更、高いだ安いだ言いませんよ。って言うか、1番最初に提案して欲しかった!
すぐ近くにある写真館は地元に愛され続けた創業114年だか141年のレトロな建物。扉を押すと暑くて重たい空気がこもっていた。奥からご年配のご婦人が「証明写真ですか? ごめんなさい、30分で帰って来ますから」。どうやらカメラマンのご主人は出掛けているらしい。泣きたくなってきた。30分後、再び写真館に訪ねるとご年配のご主人がスタンバイ。昭和の男は奥様への口調も強く、決して気持ち良いものではなかった。さらにご自身で忘れっぽくなっている事を自覚しているのか、「付けた・付けた・付けた」「消した・消した・消した」と行動の全てをモゴモゴと3回ずつ繰り返す。最初は私に言っているのかと思うボリュームで。奥様が「ネックレス外してね、イヤリングもネックレスもダメなの。前髪も、もう少し分けましょうね」と年代物のブラシで直してくれた。数分後、証明写真は出来上がった。
「うん、よく撮れてる」とご主人は自画自賛。確かに証明写真としては完璧! キレイに撮れ過ぎて顔のシミそばかす、シワまでもがクッキリハッキリ。前回のパスポート写真は都内の写真館でデジタル撮影だったので、支障ない程度に整えていてくれたのでしょう。今回の写真とは、大きな差(泣)。あ、でも、もしかしたら10年前の私と今の私の差?
残酷な証明写真を手に市役所の受付に戻ると「やっぱりよく撮れてますね」。その言葉にホッとしたのも束の間「髪の色はずっと同じ色ですよね」と念を押された。え? え? え? 髪の色? 10年後の髪の色? そんなもん分かるかい!? 今は白髪隠しでミルクティーにしてるけど、ブリーチは髪を痛めるからいつまで続けるかわからない。もっともっと白髪が増えたらグレイヘアにするわ! 髪の色までチェック入るの? 前髪だ、髪の色だと、まるでくだらない校則と同じじゃん。今は入国審査に瞳の虹彩や指紋の生体認証が殆どなのに、髪の色? 意味わかんない。17歳から10年毎にパスポートの申請をしてるけれど、こんなに厳しいのは初めて。犯罪が巧妙になってるからだろうけど、厳しさの方向性が微妙にズレてると感じたのは私だけかしら?
私の夢は世界一周。これからも旅を楽しむためにも、要介護にならないためにも、足腰だけは丈夫じゃないと。足首クルクル、踵落とし、太腿伸ばし、信号待ちの横断歩道や部屋の中でも、気がついたらマメにしています。「継続は力なり」ですからね。
あ、最後にオマケ。出来上がったパスポートの顔写真はモノクロでした……。最後に「髪の色」を聞かれたのは何だったのか? さらに、7月からパスポートの申請料が7,000円も安くなったそうです。ホント、トホホ。
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