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近所の公園でもこんなに出合いが! 動物言語学者・鈴木俊貴さんと、鳥の“言葉”を聞きに外に繰り出そう

世界で初めて鳥の言葉を証明した動物言語学者・鈴木俊貴さんと一緒に公園を歩く。すると見慣れていたはずの景色には、にわかに多種の鳥が現れて……。

撮影・小川朋央 構成&文・堀越和幸

鈴⽊俊貴(すずき・としたか)さん 東京大学准教授、動物言語学者。1983年生まれ。シジュウカラに言語能力を発見し、動物たちの言語を解き明かす新しい学問「動物言語学」を創設。文部科学大臣表彰など受賞多数
鈴⽊俊貴(すずき・としたか)さん 東京大学准教授、動物言語学者。1983年生まれ。シジュウカラに言語能力を発見し、動物たちの言語を解き明かす新しい学問「動物言語学」を創設。文部科学大臣表彰など受賞多数

都内の某公園。里山を保全した緑地の中に一歩足を踏み入れるなり、東京大学准教授の鈴木俊貴さんは、ほらほら、あそこにウグイスがいる、と頭上の木を指差す。見ると何もいない。が、じっと目を凝らしていると、枝葉を揺らす影の存在でようやくそれとわかる。

鈴木さんの著作『僕には鳥の言葉がわかる』は昨年に刊行されて23万部を突破した。作品では学生時代から始まったシジュウカラの観察、そしてシジュウカラ語解明に至るまでの学術的な実験がリアルに紹介されている。

「もともと動物が好きで、小さい頃から水槽やプラケースにいろいろな虫や魚を飼っていました。それが決定的に変わったのは、高校時代に双眼鏡を買って、鳥を観察し始めるようになってから。野外の鳥を見るというのは、こちらが鳥の世界に入っていく行為。彼らが何を考えているのかをもっと解明できるのではないかと思ったのです」

自著と、鈴木さんが鳥の観察に必ず携行する、フィールドノートと双眼鏡。双眼鏡はスワロフスキー社製を愛用
自著と、鈴木さんが鳥の観察に必ず携行する、フィールドノートと双眼鏡。双眼鏡はスワロフスキー社製を愛用

観察を続けていると鳥は社会性のある生き物であることがわかる。群れを作ったり、番(つがい)になったり。餌を探したり、縄張り争いをしたり、連携しながら自分たちを外敵から守ったり。

「鳥を見に行く時は、まず鳴き声でその姿を捉えましょう。次に何をしているか? さらに、どんな鳴き声で喋っているかに注意してみる。それを繰り返していると、いろいろ見えてくる」

その繰り返しを20年続けている鈴木さんのアンテナは感度が半端ではない。小1時間も経たないうちに、自分たちだけなら決して探すことができない17種もの鳥を、街の普通の公園の風景から抽出して見せるのだ。まるで鳥の世界の扉を自在に操るかのよう。

「長く研究をしているので鳴き声だけで何をしているかわかることはたくさんあります。が、これはアカデミアに限った話ではありません。いくらAIなどが発達しても、人間には自然との関わりでしか得られない知識が必ずある。鳥はそんなことを教えてくれます」

⿃と仲良くなるための3つの秘訣

POINT 1 ⿃に⾒られていることを意識しよう

バードウォッチングに出かけたなら、できるだけ鳥との距離を縮めたい。そのための秘訣として鈴木さんが最初に挙げるのは、鳥に見られていることを意識するということだ。

「鳥たちはこちらが考えている以上に人間たちを観察しています。いた!と思っていきなり駆け寄ったりすれば、あっという間に逃げてしまう。姿を認知したら、さりげなく近づくことです」

ちなみに下に並べた写真はこの日現場で観測ができた17種の鳥の中から、撮影に成功した12種の鳥たち。

【この日、写真に納まったオールスターズ】

アオジ
アオジ
アオサギ
アオサギ
ヒヨドリ
ヒヨドリ
ワカケホンセイインコ
ワカケホンセイインコ
シジュウカラ
シジュウカラ
キジバト
キジバト
ヤマガラ
ヤマガラ
ウグイス
ウグイス
コサギ
コサギ
ツグミ
ツグミ
メジロ
メジロ
カルガモ
カルガモ
アオジ
アオサギ
ヒヨドリ
ワカケホンセイインコ
シジュウカラ
キジバト
ヤマガラ
ウグイス
コサギ
ツグミ
メジロ
カルガモ

「都心の公園でも30〜40種は探そうと思えば探せます。普通に肉眼で観察するのも楽しいし、慣れてきたら双眼鏡を使うとさらに世界は広がります」

双眼鏡の倍率の選び方は、8倍から10倍程度がお勧めだ。それ以上高くなると、望遠レンズの視界で鳥を追いづらくなる。そのことに関連して、鈴木さんはこんなコツも伝授してくれた。

「よく双眼鏡を構えたままキョロキョロあたりを探そうとする人を見かけますが、それだとなかなか捉えられない。まず、耳で声を聞いて、鳥の姿を認めたらそこに視線をキープ。そしてそのままの体勢で手だけを動かし、双眼鏡を目に当てるのです(下写真)。このやり方だと見失いづらくなります」

【双眼鏡の使い方のコツ】

(1)まず鳴き声を頼りに、鳥の居場所を探す
(1)まず鳴き声を頼りに、鳥の居場所を探す
(2)見つけたら、急な動きをせず、目で捉える
(2)見つけたら、急な動きをせず、目で捉える
(3)視線をキープしたまま、手だけ動かし双眼鏡を準備
(3)視線をキープしたまま、手だけ動かし双眼鏡を準備
(4)そのままの体勢を保持して、双眼鏡を目に当てる
(4)そのままの体勢を保持して、双眼鏡を目に当てる
(1)まず鳴き声を頼りに、鳥の居場所を探す
(2)見つけたら、急な動きをせず、目で捉える
(3)視線をキープしたまま、手だけ動かし双眼鏡を準備
(4)そのままの体勢を保持して、双眼鏡を目に当てる
近所の公園でもこんなに出合いが! 動物言語学者・鈴木俊貴さんと、鳥の“言葉”を聞きに外に繰り出そう

POINT 2 春はこんなところに注⽬してみよう

春は鳥たちにとって繁殖の季節。

「シジュウカラであれば美しい声でツツピー、ツツピーと縄張りを主張する言葉を囀りますし、巣からビビビ、ビビビ……という鳴き声が聞こえてきたら、それは雛たちが“餌をちょうだい!”と親にねだっている意味になります」

たとえば都心であれば、シジュウカラはこんな意外な場所にも巣を作る。

「劣化したブロック塀の穴や、ひっくり返った植木鉢(水抜き穴を入り口にする)、あるいはよく電柱の横にある黄色いプラスチック製の筒“支線ガード”で、その隙間から芋虫を運び込む親鳥を何度か目撃したことがあります」

穴の空いた人工物は使えるのだ。

「ビビビ、という声がして2〜3週間も経てばやがて雛は巣立っていきます」

近所の公園でもこんなに出合いが! 動物言語学者・鈴木俊貴さんと、鳥の“言葉”を聞きに外に繰り出そう

POINT 3 シジュウカラの⾔葉を覚えてみよう

シジュウカラには言葉がある。研究を始めて程なく、鈴木さんは自然とそう思えるようになっていた。

「空にタカが現れると“ヒヒヒ”と鳴くし、仲間を呼ぶ時には“ヂヂヂ”と鳴きます。いつしか僕はシジュウカラ語を手掛かりにして、タカやヘビを見つけられるようになっていました」

が、そうと予想ができても、科学者はそれを証明しなければならない。そのために鈴木さんは数々の実験や論文の発表を積み重ね、今では科学的事実として世界に知らしめるに至った。

「代表的な鳴き声を覚えて(下表)、近所の公園へ出かけてみてください。鳥には鳥の言葉がある。そう考えるだけで、いつもの景色がきっと変わります」

【シジュウカラの鳴き声と意味】

ツツピーツツピー(縄張り宣言)
ヒヒヒ(空にタカを見つけた時の声)
ビビビビビ(餌をねだるヒナの声)
ジャージャー(“ヘビ”という意味の声)
ピーツピ(“警戒しろ”という意味の声)
ヂヂヂヂ(“集まれ”という意味の声)
ピーツピ・チヂヂヂ(“警戒して・集まれ”という文)

出典:『僕には鳥の言葉がわかる』鈴木俊貴著

『クロワッサン』1163号より

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