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『トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~』森アーツセンターギャラリー ──「ムーミン」を生み出した女性作家の生涯を追う

青野尚子のアート散歩。今回は、「ムーミン」最初の小説が出版されてから80年を記念して開かれるトーベ・ヤンソンの個展。日本ではなかなか見る機会のない壁画を映像などで紹介するコーナーも必見だ。

文・青野尚子

トーベ・ヤンソン 「遊び1(アウロラ病院小児病棟の壁画のためのコンペティション用スケッチ)」 1955年 テンペラ、カンヴァス ヘルシンキ市立美術館 (c)Moomin Characters™ Photo(c)HAM / Hanna Rikkonen
トーベ・ヤンソン 「遊び1(アウロラ病院小児病棟の壁画のためのコンペティション用スケッチ)」 1955年 テンペラ、カンヴァス ヘルシンキ市立美術館 (c)Moomin Characters™ Photo(c)HAM / Hanna Rikkonen

今年は「ムーミン」の最初の小説が出版されてから80年の節目の年。それを記念して生みの親、トーベ・ヤンソンの個展が開かれる。「ムーミン」だけでなく多方面で活躍した彼女の作品と生涯を紹介する展覧会だ。

1914年、ヘルシンキに生まれたトーベ・ヤンソンは子どもの頃から画家を目指し、挿絵画家だった母の影響で雑誌の挿絵や文章を描き始める。第二次世界大戦中から小説や風刺画で注目を集めるようになり、1944年に書いたムーミントロールが登場する小説が翌年『小さなトロールと大きな洪水』という題で出版された。トーベはこの本を戦争中の辛い日々からの救いの場として書き始めたといわれる。

展覧会ではこれら「ムーミン」に関する資料のほか、学生時代から1960年代前半までの油彩画も展示される。トーベは1943年に初めての個展を開き、自画像や風景画などを手がけた。日本ではなかなか見る機会のない壁画を映像などで紹介するコーナーも必見だ。1955年にアウロラ病院小児病棟の壁画のコンペに提出したスケッチにはムーミンの仲間たちが階段を駆け上がる様子が描かれる。

トーベの自画像には強い意志が感じられる。この当時、女性が画家や作家として活動していくのは大変なことだった。「ムーミン」の作者としてはもちろん、公共施設の壁画など幅広く活躍した彼女の人生から学ぶことは多いはずだ。

『トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~』

森アーツセンターギャラリー 7月16日(水)~9月17日(水)

この展覧会は、2026年に新しくトーベ・ヤンソン・ギャラリーをオープンする予定のヘルシンキ市立美術館の協力で企画されたもの。

森アーツセンターギャラリー(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階) TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 10時〜18時(金・土・祝日前日は〜20時) 会期中無休 観覧料一般平日2,300円ほか
トーベ・ヤンソン 「煙草を吸う娘(自画像)」 1940年 油彩、カンヴァス 個人蔵 (c)Tove Jansson Estate Photo(c)Finnish National Gallery Yehia Eweis
トーベ・ヤンソン 「煙草を吸う娘(自画像)」 1940年 油彩、カンヴァス 個人蔵 (c)Tove Jansson Estate Photo(c)Finnish National Gallery Yehia Eweis
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1145号より

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