暮らしに役立つ、知恵がある。

 

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

実は〝防災マニア〟だという麻生れいみさんに、日頃から向き合っている防災に対する考え方や実際に用意している備蓄について、教えてもらいました!

撮影・青木和義 文・一澤ひらり 構成・中條裕子

“非常時と日常を分けずに、災害に強い生活をめざします。”

スマホには小型のホイッスルをつけて。「何かあったときに助けを呼ぶための笛は必要です」
スマホには小型のホイッスルをつけて。「何かあったときに助けを呼ぶための笛は必要です」

昨夏、酷暑で2度も熱中症になってしまったという麻生れいみさん。

「滝のように汗が出て、具合が悪くなってしまって、命の危険を感じました。猛暑のとき大地震で停電になったらエアコンが使えなくなる。どうすれば?って悩んでしまって。しかも能登地震が起きたので、停電時でも小型家電ぐらいは動かせる電力は必要だと痛感して、ポータブル電源とソーラーパネルをセットで購入したんです」

麻生さんは災害時の電源確保ができたので、大きな安心を得たという。

「いまはスマホが命綱だから、モバイルバッテリーやポータブル電源は必須です。でも停電が続いて、ソーラーパネルでポータブル電源を充電しているときに何もないと不安なので、予備も買いました。こちらはカセットボンベを燃料にするインバーター発電機で、2つ備えていれば万全かなって」

こうした防災用品はどんどん進化しているから、買いっぱなしにせず見直してみることも大切、と麻生さん。

「今年はポータブル電源のほかにも非常用トイレを追加して、LEDランタンを各部屋に置くために買い足しました。それに寝袋さえあれば何とかなると思っていたけれど、床に寝ると冷えたり、痛かったりするので、寝袋の下に敷くエアーマットも買いました。防災グッズのアップデートは必要ですね」

冷蔵庫が使えなくなっても発酵食や乾物が助けに。

麻生さんが防災に取り組むきっかけになったのは、東日本大震災で管理栄養士として被災地に塩麴を送る支援をしたことから。

「停電して冷蔵庫が使えなくなったら、庫内にある野菜や魚を塩麴で漬ければおいしく食べられるんです。ふだんから常備しておくと、いざというときに助けになりますよ。塩麴がなくても、庫内に残っている野菜を細かく刻んでジッパー付きの保存袋に入れ、塩と酢を加えてもみこんで即席の漬物を作っておけば、常温でも3日は持ちます。そんなことをお伝えする中で、被災時の食の大切さに気づかされました」

乾物や発酵食といった日本の伝統的な保存食も大いに役立つ。

「高野豆腐、麩、かつお節などはたんぱく質、ひじき、切り干し大根、梅干しなどはミネラルの供給源になります。カップ麺や即席のみそ汁に海苔やわかめをちょい足しするだけで栄養価がアップしますから、乾物のストックはしておきたいですね」

ことに発災後の数日間は支援物資も届かず、避難所ではおにぎりやパンなど炭水化物がメインになってしまう。

「どうしてもたんぱく質、ビタミン、ミネラルが不足して、体調を崩しやすくなります。在宅避難できるなら、ふだん食べ慣れている肉や魚、豆類などの缶詰やレトルト食品をローリングストックするのがいちばんです。栄養の不足分を補うためにサプリメントも備えておけば心強いですね」

「同じ場所に収納して地震でダメにならないよう、分散収納をしています」
「同じ場所に収納して地震でダメにならないよう、分散収納をしています」

[東京備蓄ナビ]を備えの目安に。いざというときに慌てずにすむ。

災害時の炭水化物が中心の食事は、糖尿病やその予備軍の人たちにとって糖質過剰になりやすく、症状を悪化させる心配があるという。そこで麻生さんは1年以上の長期保存可能な低糖質のレトルト食品をプロデュースした。

「温めなくてもおいしくなるように作りました。非常時だけでなく、普段でも作るのが面倒なときとか、もう1品ほしいときとか、さっと出して食べられる。日常使いができて、低糖質だから健康維持のベースになります。食べることはすべての基本ですから、賢い食の選択をしてほしいですね」

麻生さんが備蓄の目安にしているのが、東京都の[東京備蓄ナビ]。

「家族の人数や年齢などの3つの質問に答えるだけで、各家庭に合わせた備蓄品目と必要量のリストが表示されます。これを参考にストックすれば災害時も慌てずにすみます。防災は非常時と平時に分けるのではなく、ふだんの生活をいかに災害に耐えられる生活にしていくかが大切ですね」

停電時の電源確保に必須のアイテム

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

イーノウの〈インバーター発電機〉。家庭用カセットボンベで発電できて、高出力。操作も簡単で、ポータブル電源の予備として購入した。

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

ヨシノの〈固体電池ポータブル電源&ソーラーパネル〉。固体電池を使用した世界初のポータブル電源で、ソーラーパネルで蓄電ができる。

在宅避難のために今年仲間入りした防災グッズ

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

エムアンドティーの〈非常用簡易トイレ〉。大容量の80回分が一箱に入って、15年の長期保管が可能。凝固剤や排便袋、防臭袋などがコンパクトに収まる。

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

Vantozonの〈LEDランタン〉。折りたたみ式で、充電はUSB、乾電池のどちらでもOK。懐中電灯やSOS緊急信号の赤ランプ機能も搭載。

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

コールマンの寝袋(左)の下に敷くEmJTaoのエアーマット(右)は、足踏み式エアーポンプを内蔵し、簡単に膨らませることができて収納もコンパクト。

非常時に不足しがちな栄養をサポート

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

避難生活で偏りがちになってしまう栄養バランスを整え、長期保存できるサプリメント。右から、〈サバイバルフーズ(R)ビタミンC〉〈サバイバルフーズ(R)マルチビタミン&ミネラル〉。

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

麻生さん監修の「低糖質おかず」。鯖の煮つけ、筑前煮など9種類。9月販売予定。

管理栄養士の麻生れいみさんに聞く、栄養や電源を確保する災害に強い暮らし。

「低糖質おかず」の1品、ひじきの五目煮。
問い合わせ:内野家
TEL.06・6946・5855
https://shop.uchinoya.com

  • 麻生れいみ

    麻生れいみ さん (あそう・れいみ)

    管理栄養士、医療栄養料理研究家

    東京都生まれ。医療と予防医学、栄養学といった幅広い視野から美と健康につながる情報を発信。57歳で東京医療保健大学大学院に進み、医療栄養学修士に。

『クロワッサン』1124号より

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