大人気ドラマ『きのう何食べた?』season2全12話、12月22日に最終回を迎えた。最後まで丁寧なつくりでこの物語としての筋を通した、キャストと制作陣に拍手を送りたい。
余韻を味わいながら後半それぞれの物語を振り返ってみよう。前半(記事はこちら)よりもボリュームが増してしまったが、おつきあいいただきたい。
6話。
売ってるおせち料理というのは画一的な味になりがちで、一般人が大晦日前に炊いた黒豆と変わらないというのはとても凄いこと、ちゃんと料亭の厨房で数量限定で作られたものの証ですよ……と誰か小日向さん(山本耕史)を慰めてあげてほしいと思いつつ、爆笑してしまったお年賀パーティーシーン。「こんなの普通じゃ食べらんな~い」と言うケンジ(内野聖陽)と「鮑もこんな大きい」と相槌を打つシロさん(西島秀俊)。考えてみればこの演者メンツで、こんなにも気を遣いまくりコメディ会話劇というのは他ではなかなか観られない。この作品ならではだ。
それはそうと、友達と一緒に大晦日カウントダウンからの初詣というイベントをやったことがないというシロさんに、season1の12話(原作漫画では7巻50話)高校時代の彼を「いろいろ他にやりたいこともあるだろうによくもまあこんなに勉強するもんだって」「思いつめた顔をしとった」という、シロさん父(田山涼成)の述懐を思い出した。誰にもカミングアウトできなかった少年がどのように自身と向き合っていたか、想像するしかない。しかし、その「思いつめたような顔」と、友達皆でワイワイ楽しむ初詣は未経験ということを併せて考えると切なくなるのだ。
40代後半でケンジだけでなく、小日向さん、ジルベール(磯村勇斗)という友人に恵まれたシロさんに、心からよかったねと言いたい。
この回ではシロさんがマンションオーナー池辺さん(諏訪太朗)に同居人のケンジは恋人だと明かした。言っちゃった……と固まる彼とは裏腹に、池辺さんはごく普通に明るく、やっぱりそうですかと。
同性愛者に対して池辺さんのように接する人は、50代の私の若い頃よりも増えている気がする。なんら特別なことではないと受け止める人々だ。社会は変わりつつある。子どもが、少年時代のシロさんのような思いを抱えずに済む世がよい。
7話。
シロさんの老眼から始まって、ダイレクトに肉体の老いと、その先に必ずあるものを描いた。50歳前後から同世代の知人友人の訃報にたじろぐことが増えてくる。泉下への旅立ちは避けられないこととは知りながら、そして遺族が落ち着いていても、弔問後はやはり気持ちが沈むものだ。そんなときに帰宅後あたたかい料理が用意されていたら、どんなに元気づけられることだろう。
ケンジ特製、海老の天ぷらの乗った鍋焼きうどん。天ぷらの衣の油が溶け出して甘くコクが増したおつゆと、喉ごしのよいうどんはシロさんの心を思いやってのこと。
そして、ふたりの誕生日を祝うシロさんの料理は彩り良いばらちらし寿司と、鶏天・アボカド天。揚げ物好きのケンジのために、しかし鶏もも肉の唐揚げでなく胸肉の天ぷらというところに、少しでもヘルシーなものをというシロさんらしい配慮が見られる。
それはそうと誕生日を祝うか否か。このふたりでも、しょうもない喧嘩をするんだなと、なんとなく安心した。
スーパーアキヨシ店員さん(唯野未歩子)の「お似合いですよ」。シロさんの眼鏡に対してか、それともシロさんとケンジ、パートナーとしての姿への言葉か。そのどちらの意味もあるのだろう。