そばに置いてパワーアップ!川端正吾さんが選ぶ、全国の縁起もの7選。
撮影・青木和義 構成と文・田辺 香
家内安全、無病息災、商売繁盛。さまざまな願いが込められた縁起もの。
開運を願って全国で作られる「縁起もの」。
川端正吾さんが今まで集めた開運に関するアイテムは100を超えるという。
「父方の実家が民芸品店を営んでいたので、子どもの頃になじんだものに似ているんです。地方の職人が新しい感性で創作したものもたくさんある。今回はインテリアとしてセンスを感じるものを集めました」
【1】[大分県]北山田(きたやまだ)のきじ車(ぐるま)
柔らかい朴(ほう)の木を鉈で削って馬の形に仕上げた玩具。赤ちゃんの成長を願ってきじ車が贈られたという江戸時代の習慣が由来とされる。
昭和30年代から作り継がれ、玖珠(くす)町を代表する民芸品に。現在は〈大野原きじ車保存会〉が技術を伝承している。
「イギリス人の著名な陶芸家バーナード・リーチが、きじ車の造形美を称賛したという逸話があるんです。素朴でシンプル。力強い存在感が魅力だと思います」(川端さん)
【2】[岡山県]玉島(たましま)だるま
倉敷市・玉島地区では戦後に縁起だるまを作るようになった。
当初は群馬県の高崎だるまを手本に、その後は独自の郷土玩具を目指して改良が重ねられた。現在は〈玉島だるま・虎製造所〉が製作する。
「七転び八起きの精神にちなみ、底におもりが入れられた起き上がり小法師になっています。目の隈取りや愛嬌のある表情が特徴的。8cmの豆だるまはサイズ感も相まって、キャラクター人形のような愛らしさです」
【3】[宮崎県]祝結(いわいむす)び
「左右2本の縄がしっかり結びつく『祝結び』は、家内安全を願う飾り。ソリッドな美しさがあります」。
通年、しめ縄を飾る風習がある日之影町の工房〈わら細工たくぼ〉が3代にわたり、藁の栽培から手作りで行っている。
「祝結び」のほか、穏やかな日々を願う「平和結び」や良縁を願う「縁結び」など、10種類以上のわら細工を製作。ホームページから1〜7月に注文可能。
【4】[長崎県]長崎凧(ながさきはた)
長崎の「凧揚(はたあ)げ」は、「精霊(しょうろう)流し」「長崎くんち」とならび、江戸時代から続く三大行事の一つ。毎年4月に「凧揚(はたあ)げ大会」が行われる。
「赤と青の紋様は手染めの和紙で切り貼りしているとか。グラフィカルなデザインがかっこいいですね」。
明治40年創業の〈小川凧店(はたてん)〉では人気の紋様を30種ほど製作。「波に千鳥」(写真中央)は夫婦円満や家内安全のご利益が。ミニチュアの豆凧はみやげ用に。
【5】[熊本県]木葉猿(このはざる)
奈良時代が起源だという素焼きの置物。かつて数軒あった窯元も、現在では〈木葉猿窯元〉のみに。7代目の永田禮三さんと、8代目の娘の早絵さんが、ひとつずつ手づくりしている。
おにぎりを持った『飯喰い猿』には「一生食べ物に困らないように」という願いが込められている。
「素朴なフォークアートのような佇まい。なんともワクワク感があります」。
無病息災、子孫繁栄のお守りとしても人気だそう。
【6】[岐阜県]飛騨(ひだ)の雪入道(ゆきにゅうどう)
雪深い奥飛騨に伝わる妖怪をモチーフに、高山市の〈奥井木工舎〉が5年前から製作を始めた。
もともとは、朴の木で木杓子を作っている工房が、杓子の木片を使って郷土玩具を作りたいとの思いで生み出したもの。
「目と口の朱色に魔除けの意味が込められています。まだ新顔ですが、木目を生かした風合いに味があり表情もかわいい。今後さらに土地に根付き、長く愛される郷土玩具になっていくと思います」
【7】[福岡県]うその餅
太宰府天満宮で毎年行われる「うそ替え神事」は小鳥の「うそ」と「嘘」をめぐる行事。参拝者が木彫りの「うそ」を交換し合い、去年の災いを「嘘」として吉に替える意味がある。
和菓子店〈梅園〉が昭和23年の創業当時から作り続ける『うその餅』には博多人形師が作る小さな土うそ人形が入れられる。
「元日から数量限定で木うそ入りが販売されます。ピンクの餅は期間限定。緑ともに爽やかな青じそ風味です」
『クロワッサン』1060号より