転倒による骨折防止に、柔軟性アップのストレッチを。
文・吉田真帆 撮影・鈴木江実子 イラストレーション・松元まり子 モデル・寿々ともみ
骨を守るためには、体をしなやかに保つこと。
骨粗しょう症になると、健康な骨なら耐えられる衝撃でも、骨折してしまうことが。足の付け根や腰、背中など身体機能にとって重要な部分も骨折しやすくなり、高齢の場合、なかなか回復せずに、これをきっかけに寝たきりになってしまうことも……。
転倒が骨折の一番の原因。年をとると運動能力が衰え、ちょっとした段差や凹凸にもつまずいたり、転びやすくなります。骨を守るためには、骨そのものを丈夫にすることも大事ですが、転倒しない体づくりも欠かせません。
転ばないためには、体の柔軟性を高めることが重要なポイントです。股関節や膝、足首といった関節の動きが悪いと、体を動かせる範囲が狭くなり、転倒につながります。体が硬いと、バランスをくずした瞬間に踏みとどまりにくくなります。ケガをしてから後悔しないためにも、柔軟性をキープするストレッチを日々の習慣にしましょう。
ここでは、朝目覚めたときから、夜眠りにつくまで、一日を通してできるストレッチを紹介します。無理をせず、筋肉や腱が伸びる感覚を心地よく感じながら行ってください。体は放っておくとどんどん硬くなっていきます。こまめにほぐすことで、動作がスムーズになり、バランスをとる能力が向上。転びにくくなります。
柔軟性を高めるメリットは、ほかにもあります。肩こりや腰痛を予防し、ポーズによっては筋トレ効果もあります。柔軟性が高くなると筋肉に余計な負荷がかかりにくくなるので、疲れにくくなるというメリットも期待できます。ストレッチで、軽やかな体を手に入れましょう。
うっかりつまずきが骨折の原因
(1)体幹がしなやかで、股関節がしっかり動けば、段差や傾きに対応できる。
(2)手首やひじの動きがなめらかなら、転びそうになっても何かにつかまったり、手をついたりできる。
(3)足の筋肉が柔軟で関節の可動域が広ければ、つまずいても、もう片方の足を踏み出せる。
<起床時>眠っていた全身をスムーズに目覚めさせる
【寝たままグーパー】
[目標]
1セット×30回 毎朝1セット
目が覚めたら、起き上がる前に手足の先を動かすことで、末梢への血流を促し、体を目覚めさせると思わぬ転倒などを防ぐことができます。
寝たままグーパー
あおむけで手足を上に向かって伸ばす。グー(握る)、パー(開く)の動きを、手足同時に繰り返す。
【赤ちゃんポーズ】
[目標]
1セット×2回 毎朝1セット
体をできるだけギュッと丸めます。腕の力によって背中全体と首筋まで伸ばします。
布団の中でもできます。
膝を抱えて丸くなる
両腕で膝を抱えて引き寄せ、上半身を起こしてできるだけ丸くなる。20〜30秒静止。首や頭も膝に近づけ、目線は両膝の間へ。
【股関節ストレッチ】
[目標]
1セット×各10回 毎朝1セット
目覚めたばかりの体の動きをよくするストレッチ。立って歩くために重要な、上半身と下半身をつなぐ股関節の動きをよくします。お尻の筋肉も伸ばします。
(1)足を前に上げる
壁の近くに立ち、バランスをくずさないように片手を壁につく。逆側の手は腰に当てる。片足を上げて、膝は直角に曲げる。
(2)足を前後に振る
足を曲げたまま前後に振る。もう片方の足も同様に振る。
<昼間>大きな関節の動きをなめらかにする
【四股立ち】
[目標]
1セット×10回 1日2セット
固まりがちな股関節を開き、太腿の前面の筋肉も鍛えます。
息を吐きながら、ゆっくりと腰を落とすのがコツです。
(1)足を広げて合掌
足はつま先を少し外側に向けて大きく広げ、背筋を伸ばし、胸の前で手のひらを合わせる。視線は前へ。
(2)腰を落とす
上半身はそのままに、膝を曲げて腰をゆっくり落とす。前傾したり後ろに倒れないように注意。
●POINT
膝が内側に向かないように気をつけよう。つま先を外に向ける。
【肩入れ】
[目標]
1セット×各5回 1日2セット
肩甲骨周りの筋肉を中心に背中全体をほぐし、上半身の可動域を広げます。
股関節を開く四股(しこ)立ちの効果もあります。
(1)四股立ちで手を膝の上へ
つま先を少し外側に向けて大きく広げて立ち、膝を曲げて手を膝の上に当てる。ひじは伸ばし、体重を膝に乗せる。
(2)肩を前に倒して上半身をねじる
片側の肩を前面内側にねじり(肩入れ)、視線は上に向け、上半身を思い切りねじり、5秒静止。反対側も同様に行う。