医師が教える、体をリセットする良質な睡眠のための夜の習慣。
よい眠りとは、ベッドに入ったらすぐに深い眠りに入り、浅い眠りと交互に繰り返して自然に起床することです。寝つきをよくし、深く眠るための夜の習慣とは、どのようなものでしょうか?
文・韮澤恵理 イラストレーション・松元まり子
スマホは見ない。【×】
スマホのブルーライトは交感神経を刺激し、脳を覚醒させる働きがとても強いのが特徴です。寝る直前までスマホをいじっていると、ベッドに入ってもなかなか寝つけなかったり、眠りの質が落ちることがわかっています。
ベッドまでスマホを持ち込むのはもってのほか。見ないように気をつけても、ついつい見たくなるのがスマホです。
夜10時を過ぎたら画面のオフではなく、電源を切り、寝室には絶対に持ち込まないといったルールを作るなど、「ちょい見」を防ぐ決心が必要です。
照明を落として真っ暗に。【×】
就寝に向けて、少しずつ照明を落とすと体が眠る態勢になっていき、寝つきはよくなります。
でもそれだけでは不十分。実は光の色も眠りに大きく影響します。蛍光灯やLED電球は、青白い昼光色、中間の昼白色、温かみのある電球色があり、電球色が最も波長の長いリラックスする光です。
光量を落としても、青白い光では、交感神経優位のままなので、光の色も変えるのが安眠のコツです。夜になったら全体照明を消し、電球色の間接照明などに切り替えるのがおすすめ。温かい光のスタンドなどを活用してみましょう。
寝る前には何も食べない。【×】
食事は寝る3時間前までにすませるのが基本ですが、深夜お腹が空いて眠れないことも。そんなときに空腹を我慢しても、かえって眠れません。
寝る前の食事がよくないのは、睡眠中にも消化器が働き続けて、血液が消化器に集中し、体の再生がおろそかになるからです。
眠れないほど空腹なのに我慢する必要はありません。消化のいい軽い食べ物や飲み物を少量口にするほうがいいのです。ホットミルクがいいとよくいわれますが、温かいスープ、少量の雑炊などもおすすめです。
エアコンはオフ。【×】
エアコンをつけっぱなしにすると風邪をひいたり、体が冷えるので、就寝時にエアコンはオフにしなければならないと思っている人がいまだに多いけれど、これは間違い。暑い、寒いで寝苦しいと睡眠の質は下がります。
良質な睡眠は快適な睡眠環境からです。エアコンはつけっぱなしにして朝まで快適に眠るほうがずっといいのです。
冬は20度くらい、夏は25度くらいを目安にし、寝室以外の家の中の温度を同じにするのも自律神経の負担を減らします。
エアコンによる乾燥はのどにも肌にもダメージなので、湿度にも注意をはらってください。
夜、運動で体を疲れさせれば寝つきがよくなる。【×】
運動不足は疲れやすさの原因なので、こまめな運動はおすすめです。でも、寝る前のランニングや筋トレは実はよくありません。
息が上がるような激しい運動は、就寝3時間前までに終わりにしてください。激しい運動は、深部体温を上げてしまい、交感神経が活発になることでせっかく夕方から眠りに向かっている体内時計を狂わせてしまうからです。
仕事の後のジム通いや、ランニングなどは8時くらいまでに終了。寝る前は体の緊張をとり、深い呼吸ができるストレッチやヨガなどがおすすめです。
入浴は湯冷めしない就寝食前に。【×】
お風呂から上がってすぐに寝ると体温が高いままなので眠れません。できれば就寝1〜2時間前の入浴がおすすめ。よい眠りは、深部体温が下がり始める時に訪れます。入浴で手足が温まると末梢血管が拡張して熱を逃がすので、深部体温が下がって眠くなります。入浴後1〜2時間が頃合いというわけです。
また、しっかり湯船に浸かると眠りの質が高まることはよく知られています。ただし、入浴時間は15分程度で十分。それ以上長くても血流はあまり変わりません。長湯をしすぎるとかえって疲れることも。
体は右側を下にして寝る。【○】
しっかり眠っているつもりで、疲れがとれない、朝起きられないという人は、睡眠中にいびきをかいているかもしれません。いびきは眠りを浅くしてしまいます。
いびきかいているようなら、まず横向き寝を試してみましょう。仰向けに比べて気道が確保されやすく、いびきを減らせます。
右向き寝をすすめるのは、胃が右側に向かってカーブしているので、この姿勢なら消化の流れを妨げないからです。抱き枕などを利用すると、自然にくせにできます。
『Dr.クロワッサン 免疫力を強くする、疲れない体のつくり方。』(2020年6月26日発行)より。