ドライマウスの症状とは? 口を潤せば、頰のたるみも改善!?
実は生活習慣に原因があることが多く、意識すれば改善の余地は大いにあり。矯正歯科治療専門医の坂本紗有見さんに教わります。
イラストレーション・鈴木衣津子 文・板倉みきこ
口を潤せば、頰のたるみも改善!?
【CHECK LIST】
□ 食べ物が飲み込みにくい
□ 話をしていると口が乾く
□ 口の中がネバネバする
□ 声がかすれる
□ 喉がよく渇く
□ 舌や口の粘膜がヒリヒリ痛む
□ 口で息をするクセがある
□ 最近消化が悪くなった
□ 味覚を感じにくい
□ 運動不足
2個該当すれば、ドライマウスの予備軍。しっかり唾液を出す習慣を取り入れたい。3個以上該当し、最近歯科医にも行っていないという人は、歯周病などのチェックも含め、検診がおすすめ。
健康な成人の場合、一日で平均約1.5L分泌される唾液。消化を促し、咀嚼や嚥下を助けるだけでなく、自浄作用、抗菌作用、免疫作用などを持つ、天然の万能薬とも呼べる存在だ。
「ストレスの軽減作用があり、アンチエイジングホルモンのパロチンが、唾液に含まれていることもわかっています。心身の健康維持には、口の中が唾液で潤っているかが大事なのです」(矯正歯科治療専門医・坂本紗有見さん)
食べ物が飲み込みにくかったり、口の中がネバネバしたり、喉がよく渇くというのは、唾液が減っているサイン。
「唾液があまり出ない人の原因の一つとして考えられるのは、舌を適切に使えていないこと。唾液は口の中にある複数の腺から分泌されますが、ちゃんと舌が動かないと唾液腺が刺激されず、唾液が出にくくなるのです」
食事中よく噛まない、食事の量や回数が減るなど、食べる時に使う舌の動きだけでなく、会話や運動も唾液の量に影響を与えている。
「喋る時も舌を使いますので、一日誰とも話さないという生活が続くと、唾液は出にくくなります。また、舌や口は筋肉と連動しているので、運動不足の人も口の中が乾きやすいでしょう」
そこで坂本さんが推奨するのが、舌を上下左右に動かすベロ回し(下記参照)で、唾液の量を増やすこと。
「食事前にベロ回しを行えば、消化吸収力もアップしますよ」
口腔内の乾燥をさらに進める、口呼吸のクセを改善したい。
口が乾く原因で、ほとんどの人に自覚症状がないのが口呼吸。
「患者さんに指摘しても『してません』と言う方が多いんですが、ずっと見ていると口が開いていたりします。集中すると口が開いたり、睡眠中に無意識で口呼吸になる人も。今回、ウイルス対策でマスクを常用するようになりましたが、マスクで隠れると気が緩んだり、息苦しさから口呼吸をしている人も多いのではないかと思います。マスクのにおいが気になるなら、口呼吸を疑ってみたほうがいいですね」
口呼吸のクセがある人は、口腔内が乾燥しやすく、口腔内の細菌バランスが乱れ、歯周病や虫歯などになりやすい。
「鼻の病気やアレルギーが原因なら、まずはそれらを治すこと。でも、口呼吸をしている人の多くは、口が開きやすい前屈みの姿勢をしていたり、しっかり噛まないので筋肉がたるみ、口を閉めにくい、というように生活習慣が関わっているもの。舌をしっかり動かし、よく噛み、口の中が唾液で充分潤う状態に改善できれば、口呼吸のクセが直り、頰のたるみも改善するなど、うれしい二次的効果も得られますよ」
唾液を出す3つの腺
代表的な唾液腺は3つ。免疫作用のあるサラサラの唾液を出す耳下腺、食べ物を飲み込みやすくしたり、細菌を撃退するネバネバ唾液を出す舌下腺、両方の唾液を出すのが顎下腺。
日頃からできる簡単マウスケア
●食事中の飲料はできるだけ控える
食べ物が飲み込みにくいと飲料を飲みたくなるが、唾液を分泌する機能が働かなくなるという悪循環に陥る。よく噛むのが唾液を出す基本。リラックスしていないと唾液も出ないので、食事をゆっくり味わうよう心がけて。
●無意識の口呼吸を防ぐ
無意識な状態で筋肉が弛緩し、口が開きがちな睡眠中。口呼吸を防ぐテープなど、市販のグッズを試すのも手。日中は片方の鼻の穴を押さえながら行う、鼻呼吸の練習を心がける。歯並びを改善すると口呼吸が直ることも多い。
●舌を上下左右に動かすベロ回しで唾液を出す
口を閉じた状態で、舌で歯の表や裏側をなぞったり、歯茎をなぞったり、上下左右に動かす。また口を開けて思いっきり舌を出したりひっこめたりする。食事の前に行うと唾液がしっかり出るので、咀嚼や嚥下がしやすくなる。
『クロワッサン』1034号より