芸人として活動中だという佐々木さん。
特にお笑いが好きでもなく、
「売れたい!」
といった願望もなく、バイトに精を出す毎日とのこと。
「このまま芸人を続けて良いものか?」とお悩みですが、正直、筆者にはどうともお答えのしようがありません。
仰る通り、「自分で決断すべき」なのもそうなのですが、そもそも“プロの芸人”という言葉に違和感があるからです。
芸人に限らず、“プロ”と“アマ”をあえて線引きするのであれば、「その仕事で飯が食えているかどうか?」だと筆者は思っています。
いや、考え方は人それぞれですし、“芸人”という肩書きなど所詮は自称。
誰がどう名乗ろうが勝手なわけですが、その一方で、養成所を卒業しようと、芸能事務所に所属していようと、生計が立てられないのであれば、
「私はプロだ!」
と言ってみたところで、虚しいだけではないでしょうか。
……とひとまず先輩風を吹かせてみましたが、かつての筆者も似たようなものでした。
中2の夏から不登校、そのまま6年間の引きこもり生活。
20歳手前で大検を取得して、地方の大学に潜り込むも、ほどなく失踪同然で上京し芸人を志しました。
“志した”といっても、「絶対、売れてやる!」といった若者らしい野心や気概はゼロ。
相談者と少し違うのは、履歴書が実質“中卒”で、白紙同然だったことです(あくまで当時の筆者がそう思っていた、という話ですが……)。
おまけに、大学やバイト先の友人に両親、とにかく、誰にも何も告げず全ての人間関係を断って上京したので、コネも伝手もない有様で、就職もままならなかった。
詳しくは拙著「ヒキコモリ漂流記」に任せますが、“人との繋がり”以前に、“社会に入っていけない”状況で、
(お笑いやめたら、いよいよやることが無いなー……)
と八方塞がり。
つまり、“好きか嫌いか”は、何かを続ける理由にも、辞める理由にもなり得なかったのです。
相談者の文面からは、
「実家へ戻ろうかな……」
とお考えのようにも窺えるので、ご両親との関係性は、“絶縁”というほど決定的に破綻しているわけではなさそう(違ったら申し訳ない)。
その点は一安心ですが、一方で、何かにつけて持ち出される“親”の身になれば、それを「孝行」と言うのも微妙な気がします。
もしかすると、
「好きなことを見つけなきゃ!」
「好きなことを仕事にしなきゃ!」
という考えに囚われ過ぎてはいないでしょうか。
勿論、素晴らしいことでしょうが、筆者は常々、
「なれた自分でやっていく」
というのも悪くないと思っています。
筆者の知る限り、世に出る芸人というのは、総じて芸に対しては真面目。
誰もがやったことのないネタ……“発明”を成し遂げることでしか、お声が掛かることはないからです。
乱暴な物言いですが、好きでも嫌いでもなんとなくでも、そこはどうでも良い。
しかし、「食うために」力を尽くせないのであれば、色々考え直した方が良いかもしれません。
お互い、精進しましょう。