インテリアスタイリストの矢口紀子さんの自宅にお邪魔したのは、今年の初めのことでした。1018号の「お気に入りは、直して使う。」というテーマで、矢口さんが趣味にしている金継ぎの作品を撮影させてもらうためです。https://croissant-online.jp/life/119255/
矢口さんの自宅に伺うのは初めて。撮影準備を進める矢口さんとカメラマンの傍らで、私は家のなかをキョロキョロ。なぜならば、そこは<実践できる素敵なインテリアアイデア>の宝庫だったからです。
「矢口さん、このカーテン、すごくいいね! もしかして手作り?」
「このソファもカッコいいー。もしかしてアウトドア用? どこのメーカー?」
「この椅子、どこの?」「このオブジェなに?」
矢口さんと仕事をするようになって20年あまり、これまで数々のページを一緒に作ってきましたが、自宅インテリアの写真も見たことがありませんでした。なぜなら矢口さんの師匠・インテリアスタイリストの草分けである岩立通子さんの教えに、「インテリアスタイリストは、自宅に取材のカメラを入れてはならない」という厳格なルールがあるから。
仕事とプライベートをきちんと分けろ、ということなのですが、私を含め、いま『クロワッサン』にいる編集者の多くはかつて岩立さんと仕事をしたことがあり、その美学の厳しさを知っています。弟子たちを厳しくも慈しみつつ育てたことでも知られる岩立さん、その一人である矢口さんに、師匠の教えに逆らって家を撮影させろと言う編集者はいません。なぜなら私たちもまた、岩立さんと一緒の仕事を通じて多くのことを教えられ、育てられてきたからです。
今回は、矢口さんの自宅をそのままそっくり都内スタジオに再現することにしました。